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桜花賞には母の無念を娘が晴らしてきた歴史がある

2011年の桜花賞のパドック(写真はマルセリーナ)

 無観客競馬が続く中で、いよいよクラシック開幕となった。競馬ライターの東田和美氏が桜花賞について考察した。

 * * *
 マルセリーナがディープインパクト産駒として初のGⅠを勝ったのが、東日本大震災があった2011年のこのレース。当時関東での競馬は6週にわたって中止、関西でも自粛ムードが漂い、レース前のパドック内に馬主や厩舎関係者が集うこともなかった。

 この年は大本命と言われたレーヴディソールが1週前に故障。レーヴディソールの僚馬でエルフィンSから直行となった2番人気マルセリーナが勝ち、2着にはクイーンC勝ちの1番人気ホエールキャプチャ、3着にはフラワーC勝ち、4番人気のトレンドハンターが入る。ここ2年の勝ち馬がそうであったように、トライアルを使っていない馬が上位を占めた。

 桜花賞では母(やその姉妹など)の無念を娘が晴らしてきた歴史がある。

 1979年のオークス馬アグネスレディーは、桜花賞ではホースメンテスコの6着に敗れている(全姉クインリマンドも桜花賞では2着だった)。そのアグネスレディーとロイヤルスキーの間に生まれたのがアグネスフローラで、1990年の桜花賞馬となった。

 1991年のスカーレットブーケは3番人気で4着までだったが、繁殖牝馬としては優秀だった。まず初仔スカーレットメールがチューリップ賞2着で出走権を得るが本番は回避。2001年にはダイワルージュがアネモネSを制して本番に臨み2番人気に推されたものの3着(勝ち馬は後述するテイエムオーシャン)。2004年にはダイワメジャーが皐月賞馬に、2007年ついにダイワスカーレットが難敵ウオッカを破って桜花賞馬になった。

 また1996年には、前年最優秀3歳牝馬(当時)に選出されたビワハイジがまさかの15着に惨敗するが、2009年には娘・ブエナビスタがしっかり仇をとり、さらに2006年に2番人気で出走したフサイチパンドラも14着に大敗するが、2018年に娘・アーモンドアイが雪辱する。

 一方、偉大な祖母の名を蘇らせた孫娘もいる。

 1985年の桜花賞を勝った逃げ馬エルプスの第2子リヴァーガールは1勝で繁殖に上がったが、その子テイエムオーシャンは2001年の桜花賞を、単勝1.3倍の圧倒的人気に応えて勝った。

 また1993年の桜花賞馬ベガは、立て続けにGⅠ勝ちの息子を産むが、牝馬ヒストリックスターを産んだ翌2006年に急逝。娘は不出走に終わったが、その子ハープスターが2014年の桜花賞馬になった。

 惜敗の母の無念を娘が晴らし、祖母の栄光を孫が引き継ぐというのが牝馬クラシックなのかもしれない。

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