新型コロナまん延阻止のため発令された緊急事態宣言を受け、営業を中止した飲食店(時事通信フォト)
内海さんには小さな子供と高齢の病弱な両親がいる。新型コロナウイルスへの恐怖も大きく、できれば休業したいと本音を漏らす。
「命が大事なのはわかりますが、今営業しないと一ヶ月後には本当に野垂れ死にます。今営業をしていれば、向こう一ヶ月か二ヶ月は暮らせるだけの金が残る」(内海さん)
店では表向き「19時以降のアルコール提供を控える」としているが、実際には19時以降もアルコールの提供を行い、普段通りの営業を行なっている。
「まさに“闇営業”ですね。知り合いのお客さんからは『やってる?』と問い合わせが入るので、こっそり案内している。外の看板の電気も消して外からは営業しているのかわかりません。休業していた近隣店舗も、こっそり営業を再開し始めています。一ヶ月後に50万円の補償金が出たところで、全然足りない。その為には闇営業をしていないと、店は潰れます」(内海さん)
中小企業や個人経営者は、一般的なサラリーマンが考えているよりもギリギリの資金繰りで、なんとか会社や店の運営を続けている。一部の人々にとって、彼らの姿は「自分勝手」にも映るかもしれない。ただ「仕事はするな、いつになるかわからないが、わずかなカネは渡す」と言われて、素直に応じる人が、果たしてどれくらいいるだろうか。
自治体によっては休業要請に応じない商業施設を「公表」するといった意向を示しており、自粛や休業をしない経営者らが「悪い」といった雰囲気が醸成されつつもある。止むに止まれず営業を続ける人たちを責めるより、手厚い補償を国や自治体に求め続けることの方がどれほど建設的か、私たちは冷静に考える必要がある。