国内

共通テスト頓挫、独自入試で見えてきた「広がる大学格差」

大学入試もコロナ禍に見舞われた(時事通信フォト)

 文科省による「大学入学共通テスト」改革が頓挫したことで、入試改革は大学自身の手に委ねられることになったが、今年はもう一つ、大学入試の実施において大きな事件があった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国公立8大学23学部で、後期日程の試験が中止になったのだ。文科大臣補佐官だった2015〜2018年に大学入試改革を推進してきた鈴木寛氏(東京大・慶應大教授)は、「日本の大学入試の多様性のなさが原因だ」と指摘する。

 * * *
──入試が中止になって受験機会が奪われるというのは、あってはならないことではないか。

鈴木氏:その通りです。新型コロナによって、一発試験の弊害が露わになりました。私は以前からずっと、冬場の一番寒い、インフルエンザが流行る時期に、一発試験で合否を決めることには問題があると言い続けてきましたが、危惧していたことが現実になった。今年は収束したとしても、来年また新型コロナが再流行したらどうするのでしょう。試験会場なんて“3密”もいいところで、今年よりも早い時期から流行すれば、共通テストも私立入試も国公立二次も全部吹っ飛びかねません。共通テストに年に4回受けられる英語の民間試験を導入しようとしたのはリスク分散の意図もあったのです。

 大学入試改革では、「入試の多様化」をテーマにしてきました。AO入試(*注)の導入もその一つです。AO入試では、学力テストだけでなく、高校時代の活動や研究への意欲なども評価の対象になるので、試験の時期や当日の本人の体調などは関係なくなる。もっとも、今年はインターハイがなくなってAO入試も大変になっている部分もありますが、AOはスポーツだけではありませんし、インターハイがなかったとしても、そのことをどう受け止め何をしたかを述べられるならAO入試には臨めます。私は、AOがいいとか、一般入試がダメだとかいっているのではなく、多様な入試を、多様なタイミングでやっておくことが、リスク分散の観点からも、多様性確保の観点からも重要だということです。

 その意味で、昔に比べれば入試の多様化は進んできましたが、まだまだ冬場の一発試験が主流です。それが新型コロナによって揺らいでいると言えます。

【*注:AO入試/アドミッションズ・オフィス入試。鈴木氏が教授を務める慶應大では「一定の資格基準を満たしていれば自分の意思で自由に出願できる推薦者不要の公募制入試」と定めている】

◆「公平公正な入試」で失われるもの

──しかし、AO入試に対しても批判は多い。

鈴木氏:一発入試の擁護派の人たちは、「AO入試で入ってきた学生は学力が低くて駄目だ」と言い、批判的なメディアも多い。しかし、現実にはAO入試を導入する大学はどんどん増えています。なぜかというと、AO入試で入ってきた学生は、入学した時点では確かに一般入試で入った学生に比べて学力テストの成績は若干低いのですが、在学中に一般入試組を抜いて、卒業時には逆転することが多いからです。「この大学でこれを学びたい」と明確な意志を持って入学してくる学生のほうが学習意欲が高く、やはり伸びる。一方、一般入試で入ってくる学生たちは、入試が目的になりがちで、入学後はあまり勉強しなかったりします。

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
乱戦の東京15区補選を制した酒井菜摘候補(撮影:小川裕夫)
東京15区で注目を浴びた選挙「妨害」 果たして、公職選挙法改正で取り締まるべきなのか
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン