2010年に中国企業・山東如意科技集団の傘下に入ったレナウン(右が当時社長だった北畑稔氏/時事通信フォト)
さらにいえば、レナウンの社名自体は名高いものの、所有しているブランドはそれほど名高くありません。強いて挙げればアクアスキュータムとメンズスーツの「ダーバン」、アーノルドパーマーくらいではないかと思います。シンプルライフ、エンスウィート、インターメッツォなどを知っている人は恐らく少数派でしょう。
じつはレナウンの顧客はシニア層がほとんどです。筆者は今年50歳になりますが、これまでレナウンの服をほとんど買ったことがありません。筆者よりも少し年上の50代の人でも買ったことは数えるほどしかないでしょう。「レナウンが~」とSNS上で感慨にふけっているのはそれらよりも年上の世代で60歳以上ということになります。はっきりいうとシルバー向けブランドしか残っていない状況でした。
このようなアパレル企業がたとえ中国企業の傘下になったところで売れ行きが好転するはずがありません。ですからコロナショックがなくともレナウンは早晩経営破綻していたと考えられます。
一方で、今回のコロナショックによって小規模アパレルもバタバタと倒産し始めています。例えば、メルベイユアッシュもその1社です。メルベイユアッシュと書くとどんなブランドなのかさっぱり分からない人も多いでしょうが、「MERVEILLE H.」と表記すると「あ、都心百貨店で見たことがある」という人もいるのではないでしょうか。負債総額は推定7億円です。
「メルベイユアッシュ」で百貨店に8店、「ユノートル(UNE AUTRE)」で百貨店やファッションビルなどに10店出店していました。合計18店で2020年3月期の売上高は17億円だったとのことですから、1店舗1億円弱の年間売上高しかなかったということです。
報道によると、過剰債務を抱えていたうえにリーマン・ショック時に発生した為替デリバティブ取引に伴う赤字などで財務が弱体化。近年は金融債務のリスケジュールを受けながら再建に取り組んでいたといいます。
こうした中、コロナの感染防止のために全店舗の休業を余儀なくされ、「3月、4月の店舗売上がほとんど皆無」(通知文より)の状況に陥ったといいます。緊急融資を検討するなど事態の打開に動いていたものの、緊急事態宣言が延長され5月以降の売上の目途も立たず事業継続は困難と判断し、今回の措置となったようです。
このブランドもすでに経営が傾いていたところに、コロナショックによる全店休業がトドメを刺し、資金繰りが厳しくなったということです。