佐藤愛子さんと小島慶子さんが夫婦関係や人生について手紙をやりとりした単行本『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』が刊行
私自身も含め、恐らく世の多くの母親たちの中に、「こうあるべき」という概念がある。私たちは、それにがんじがらめに縛られている。その中には、例えば人が人として尊厳を守るために主張すべきことなど、譲れない部分もあるでしょう。
それは譲らなくていいし、譲ってはいけない。だけどそれ以外の「べき」を点検してみると、ほとんどの「べき」は、実は酢ダコのようなものではないか。そう気づいたんです。
友人同士でも「そんな夫とは絶対に離婚するべきだよ」って、アドバイスならぬ“クソバイス”する人、いませんか? でもその言葉が、正しさで人を叩くものなのか、愛ある大らかさをもって相手の気持ちを引き出そうとするものなのかで、受け取り方は全然違いますよね。
私は「酢ダコ多様性論」を胸に、相手に“クソバイス”する人間にはなりたくない。そうではなくて、佐藤さんのように他者に溢れんばかりの愛を注ぎたい。
本書を読み進めていくと、少女姿の小島さんが、「助けて」と必死に訴える様子が目に浮かんできました。そんな少女に佐藤さんは、時には「笑ってしまいました。ごめんなさいね」という愛おしさでくるみ、時には恐縮し過ぎることのないように発破をかけ、同じ目線で話せるように導いています。
最後は、「よしよし、大丈夫だよ」という佐藤さんの声が聞こえてくるようでした。小島さんは、そんな佐藤さんの愛に、「不覚にも涙が出た」と打ち明ける。わかります。“少女犬山”の私も、そこで一緒に抱きしめてもらえたような気持ちになりましたから。
※女性セブン2020年5月21・28日号