『九十歳。何がめでたい』が128万部のベストセラーになった作家・佐藤愛子さん(96歳)が、タレント・エッセイストの小島慶子さん(47歳)と2年にわたる手紙のやりとりをまとめた単行本『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』が話題を呼んでいる。年の差50歳、世代も考え方も違う2人が夫婦関係や生き方などについて交わす激烈なやりとりには、「面白い!」「勇気をもらった」など、共感の声が多数寄せられている。
2人の“真剣勝負”はこんな感じで展開される。
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佐藤愛子×小島慶子「酢ダコ」をめぐる手紙のやりとり(本書より摘要)
佐藤愛子
世の中にはいろんな人がいます。…「蛸の酢のもの」を酸っぱいから嫌いだという人を、味のわからん奴、と怒ってもしょうがない。また、無理に嫌いでなくなろうと努力する必要もない。…今の時代は何かというと人の気持をわからなければいけないといい過ぎる…エイいちいちうるせえ、と私はいいたくなる。
VS
小島慶子
佐藤さんは酢ダコに対する多様性に寛容でいらっしゃるのですが、私は「どんなに不味い酢ダコに当たっても、美味いと言わねばならない」と頑なに思い込んでいるようなのです。酢ダコ原理主義です。…酢ダコ嫌いであっても「酢ダコは美味い」と言うべく最大限の努力をするべきだと思っているんですね。
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そんな往復書簡エッセイ『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』をコラムニスト・エッセイストの犬山紙子さんはどう読んだのか。犬山さんによる書評をお届けする。
【プロフィール】
犬山紙子/1981年生まれ。近著『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』ほか著書多数。
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私にとって小島さんは「先を行っている先輩」。私だったら保身に走って言えないことでも小島さんはズバッと代弁してくれる論客で、それでいて実際にお会いすると、本当に優しくて気遣い上手。
ところが本書では、そうした魅力とともに、意外な繊細さまで見えてきました。
それはひとえに、小島さんが佐藤さんに対して、恥ずかしいことも悪いところも全部さらけ出して丸裸になっているから。50歳上の佐藤さんに失礼がないか気にしながらも、誠実に向き合おうとする真面目さが伝わってきました。
そしてそんな小島さんが見せる弱さに、私は自分を重ね合わせてしまいました。
小島さんは、「どんなに不味い酢ダコに当たっても美味いと言わねばならない」と頑なに思い込んでしまう酢ダコ原理主義者。実は私もそう。プライベートでは、「いまこの場ではこう言う方が周りに喜ばれるかな」と思って、つい本音を隠してしまうことがあります。
一方の佐藤さんは、酢ダコが好きな人も嫌いな人も認めて、多様性を肯定する酢ダコ多元主義者です。ハッとさせられました。