22日は歌扇で『竹の水仙』。兄弟子の四代目圓歌を踏襲したもので、つまりは笑福亭鶴光の『竹の水仙』の舞台「大津」を「小田原」に置き換えた型。落ち着いた語り口でストーリーをきちんと聞かせた。
25日は42歳で入門して現在58歳の丈助。まずは得意のナマハゲ小咄を幾つか披露、どこか圓丈に似た口調で客を脱力させてから、兄弟子の白鳥がたん丈をモデルに書いた『老人前座じじ太郎』へ。冒頭で手紙を読もうとした丈助が「手拭を忘れてきた」ことに気付いた瞬間が一番の爆笑を呼んだのがこの人らしい。
26日は一左で『締め込み』。威勢のいい亭主と負けん気の女房の夫婦喧嘩の騒々しさと人の好い泥棒のトボケた台詞回しの粘っこさが対照的で面白い。仲直りしてからサゲまでの丁寧な描写も特徴的だ。
30日は2017年度NHK新人落語大賞受賞者の志う歌が『居残り佐平次』を若々しくダイナミックに演じた。ラストは仏と言われる旦那に居残りの正体を告げようとする若い衆に佐平次が「よしなよしな、知らぬが仏よ」。亡き柳家喜多八のサゲだ。
厳しい門出となった彼らだが、これをバネに大成してほしいものだ。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接していた。今年1月に最新刊『21世紀落語史』(光文社新書)を出版するなど著書多数。
※週刊ポスト2020年6月5日号