犬の翁丸が登場するシーン。撮影にも多くの時間が割かれた(写真/WOWOW)

本木:そう、僕は無責任にアイデアを出しただけ。こうしてちゃんと物語にしてくれたのは、すべて土橋さんの手柄ですよ。

土橋:いやいや。でも僕も話を聞いてすぐに、「これは面白い!」とピンと来たんです。犬と一緒にお参りに行くなんて、それだけでもうすごく楽しそうですよね(笑い)。それでいろいろ調べ始めたら、ご利益が増す「おかげ年」や、伊勢参りに行く代表者をくじ引きで決める「お伊勢講」など、当時のいろんな風習が出てきた。

本木:代参犬も調べれば調べるほど興味深いんですよね。犬がぶら下げている巾着に、道行く人が路銀を寄進するというのも凄いし、その犬が2か月後くらいにちゃんと御札をもらって帰ってくるというのもまた凄い。日本人の類まれな信心深さと、性善説への信頼感が表れている気がしてなりません。

土橋 江戸時代にこんな面白ネタがあったのか、と驚きました。

【PROFILE】
土橋章宏(どばし・あきひろ)/作家・脚本家。1969年、大阪府生まれ。関西大学工学部卒。2011年「超高速!参勤交代」で第37回城戸賞受賞。2013年に小説『超高速!参勤交代』で作家デビュー。2014年公開の同名映画で第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。著書には映像化作品多数。

本木克英(もとき・かつひで)/映画監督。1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。松竹に入社後、1998年に監督デビュー作『てなもんや商社』で第18回藤本賞新人賞受賞。2014年『超高速!参勤交代』、2018年『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。2017年よりフリー。

●取材・構成/友清 哲

※週刊ポスト2020年6月12・19日号

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