だから私は「完全セレクト」以外にありえないと思ったが、「一部セレクト」のようにコンピューターにおまかせという曖昧さも悪くないという。運が降り注ぐのを待つ宝くじメンタル。鮨屋ならば好みのネタ以外は店のおまかせ。日本人好みの文化だろうか。WIN5はそのあたりの国民性を巧みに突いてくるのだった。
当然、傾向も出る。5つ全部1番人気とすれば的中確率は高まると思いきや、その決着はここまで1度だけ。それでも1万円以上の払い戻しだった。2人が2頭絡んだだけで15万円ついたことも。ちなみに先のオークスの日は1番人気から始まって2、1、3、1番人気で13万7410円。ダービー開催日は、1、2、7、9、1番人気で43万7280円ついた。ダービーを待つ時点で1882票残、的中は1388票。494票が大本命を外している。でもたぶん、それを含めた対抗その他を抑えていて美酒に酔ったはずだ(どうかなぁ)。
どうしても前半のレースを厚めに押さえたくなる。しかし頭を冷やして俯瞰すれば、どのレースでも1つ外せばアウト。1戦必勝の気合いで競馬新聞に穴が空くくらいに検討しなければならぬ。完全セレクトに参戦しながらも「素質馬が揃った東京10Rは手広く」なんてメンタルに、競馬の女神も国税の冷眼も、見向きもしないだろうから。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年6月26日号