21世紀は答えがなくて方向がわからない時代だから、政治リーダーには質問する力、リサーチする力、仮説を作る力、それを検証して解決策を導き出す力の「四つの力」が不可欠だ。その能力が今回の危機で試されている。
東日本大震災(3.11)の時も政府の対応は実に杜撰だったが、それでもまだ復興に向けた解決策は見えていた。しかし、今回の新型コロナ危機では、中央集権のまま国に任せていたら、真に有効な解決策は出てこないことがはっきりした。
ヨーロッパでも、連邦制のドイツが「ロベルト・コッホ研究所」の指導の下で州ごとに柔軟に対応して感染拡大を早期に抑え込んだのに対し、中央集権のフランスは中央と地方の摩擦で対策が遅れて感染爆発を招いてしまった。そうした例から見ても、今後の日本は、今回の地方の首長の台頭も踏まえ、組織論として地方分権を進めるしかない。
安倍首相は憲法改正により中央政府に権限を集中させる緊急事態条項の必要性を訴えているが、その発想自体、全く逆である。新型コロナ対策で中央と地方が対立したのは“現場”を知らない中央が莫大な予算や権限を握っているからだ。中央がまともに機能しなかった新型コロナ禍を機に、リーダーシップのある地方の首長が起点となり、真の地方自治=道州制への移行を推進していくべきである。
●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は『世界の潮流2020~21』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年7月3日号