〈人々が二〇二〇年に期待するのは、成長への夢ではなく、生活の質の充実や様々なリスクに対する回復力、そして末永い持続可能性への信頼である〉という著者の言葉がまっすぐに届いてくる。
六四年五輪の「神話」、その呪縛を解く意味でも改めて見直されるべきだという著者は、近代日本の歩みとともに検証していく。五輪の舞台となった東京の変容。米軍施政下の沖縄から出発した聖火リレー。そして活躍した選手たちを生んだ社会的背景(女子バレーと繊維産業)など、当時の日本を浮かびあがらせる。今、読まれるべき五輪史だ。
※週刊ポスト2020年7月10・17日号