もちろんYouTubeではどんな過激なパフォーマンスでも許されるわけではない。むしろ男女問わず乳首の露出がコンプライアンスに抵触してしまうなど、テレビよりも厳しい制約が敷かれている側面もある。しかし江頭はそれすらも、“NGテープ”を乳首に貼るというYouTubeならではの持ちネタへと変えている。
クセのある芸風でありながら根強い人気を保っている秘訣はどこにあるのだろうか。お笑い評論家のラリー遠田氏はその理由を次のように指摘する。
「YouTubeの世界で成功するには、広く浅く好かれている人よりも、狭く深く好かれている人のほうが有利です。限界まで体を張って必死で笑いを生み出そうとする江頭さんには、潜在的なファンが少なからず存在しているのです」
過激なアクションで顰蹙を買う一方、芸風はあくまでも作られたキャラクターであり、ときには社会貢献をする真摯な姿勢がネット上で話題になることもあった。東日本大震災発生直後、あくまでも個人の活動で2トントラックを運転して救援物資を福島県いわき市の避難所等に届けたこともその一つだ。そうした人柄の良さが根底にあることが、どれほど表面的に嫌われても多くの支持を集める理由なのだろう。
「ネット上では以前から、オリンピックを自腹で現地観戦したり、東日本大震災の被災地に救援物資を届けに行ったりしたことが伝説として語られていて、『実はいい人なのでは?』といった声が高まっていました。最近も、九州などでの豪雨災害に遭った人たちにエールを送る動画を公開していました。YouTubeでは江頭さんの人柄が見えるような企画も多く、そういうところも評判を呼んでいます。その芸風もキャラクターも実はYouTube向きだったということが成功の理由だと思います」(ラリー遠田氏)
江頭の座右の銘は、「ワンクールのレギュラーより1回の伝説」。ルーティンワークとしてお笑いの仕事をこなすのではなく、つねに1回きりの伝説に挑み続けるという姿勢もまた、視聴者を刺激してやまない彼の魅力なのかもしれない。
●取材・文/細田成嗣(HEW)