芸能

多部未華子『私の家政夫ナギサさん』はなぜ爽快に映るのか

番組公式HPより

 働く女性たちの支持が高まりそうなこのドラマ、キャスティングもハマった感がある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 やっと放送開始にこぎ着けた多部未華子主演のドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系火曜午後10時)。7月7日の第1話は世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)14.2%と、好発進しました。その中身はポップで爽快、心がちょっと軽くなり温かくなるような、不思議な癒やし系ドラマです。

 女性を中心に視聴者の反応も上々のようで「散らかった部屋に毎夜言い訳してきた私そのもの」「仕事をとったら何も残らない、という主人公に共感した」という声も聞こえてきます。

 多部さんが演じる相原メイは、医薬品メーカーのMR(薬の情報を病院に伝えるいわば営業担当)。仕事はバリバリできるけれど私生活については片付けも料理もダメ。服が散乱する汚部屋、食べ散らかした器の散乱するテーブル。仕事に集中し生きてきた痕跡が一目でわかる人。仕事は、やり甲斐がある。でもこの生活には限界があるのかも。恋愛も結婚も見ないふりで脇においてきたけれどアラサーになってこのままでいいのだろうか、という古典的な問い。

 そのメイの部屋へ突如現れたのが、大森南朋演じる「スーパー家政夫」のナギサさん。実は妹が姉のためにこっそり契約した家政夫によって、メイの人生にいかなる波乱が起こるのか……? 

 帰宅したら家の中にいたナギサさんの姿は冴えない中年のオッサンでエプロン姿。メイのブラジャーを手にしている。もう、絶対にありえない設定です。その上、マンションの隣の部屋にはたまたまライバル会社のMRでイケメンの田所(瀬戸康史)が引っ越していた。なんともまあ、ベタな構成です。いや、制作サイドはあえて「ボケ」的設定をしてSNSで突っ込んでもらおう、と画策しているのかもしれません。

 そうした点を粗探しする気にならないのが、このドラマの不思議さです。なぜか爽快。なぜかほっとする。痒いところに手が届く感じ。これって多部ちゃん効果?

「スカッとポイント」を3つ挙げてみると。

●疑似的片付け効果──ドラマを見ていると、まるで自分の家もするすると片付いていくような錯覚が。スッキリ度が増幅していく。

●何でも受け止め効果──家政夫のナギサさんは、とりあえず何でも受け止めてくれる。決してイライラして言い返したりせず、笑顔を絶やさない、ストレスを生み出さない存在。大森南朋のオバサン男が妙にはまっていて癒やし効果絶大。

●家事はシャドウワークではない──ナギサさんの極めつけのセリフが、「家事は仕事です」。女性たちが日々モンモンとしてきたことをズバっと言い切ってくれた。そのセリフに痛快さを感じた視聴者も、多いはず。

 家事というと「シャドウ・ワーク(shadow work)」、いわば影法師の労働とされてきました。当事者以外にはその価値がよく見えず、正当に評価もされないし感謝もされない。生きる上で必要な労働なのに。そこに光を当てたドラマだからこそ、多くの共感を呼んでいるのでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
退陣の記者会見に臨んだ石破茂首相(時事通信フォト)
「ミャクミャクに笑顔で手を振りながら去っていった」退陣表明をした石破首相がどうしても叶えたかった“個人の夢”とは《自民党関係者が明かす》
NEWSポストセブン
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン