国内

東京・荒川周辺 豪雨災害起きれば250万人が浸水被害に

大きな被害を受けた熊本県人吉市(2020年7月4日、写真/時事通信社)

 記録的豪雨で“暴れ川”と化した河川の水が、濁流となって堤防を越えていく。地鳴りのような轟音とともに家々に押し寄せ、またたく間に浸水。1時間ほどで1階をのみ込み、勢いはおさまることなく2階に迫る。避難場所は、もう屋根の上しか残されていない。目の前は荒れ狂った“海”となり、孤立した。

 濁流が押し寄せた繁華街では、逃げ惑う人でパニック状態になっている。水が地下街に一気に流れ込み、地上に上がりたくとも、水の勢いに負けて階段を上れない。その間にも、水かさはどんどん増していく――。

 これはあくまでシミュレーションだが、こうした光景が現実となる可能性も充分に考えられるという。

 7月3日から熊本県や岐阜県などに甚大な被害をもたらした、「令和2年7月豪雨」。熊本県だけでも72人の死者を出す大災害となっている(7月13日現在)。

 熊本県の湯前町(ゆのまえまち)では4日、24時間降雨量が489.5mmを記録。昨年10月、台風19号で東京の多摩川などが氾濫した際の降雨量は、2日間で473mm。今回の豪雨が、台風19号をはるかに上回る規模だったことがわかる。

 もし同規模の豪雨が東京を襲った場合、未曽有の事態を招く危険性があるという。元江戸川区土木部長で『水害列島』(文春新書)などの著書がある土屋信行さんが言う。

「被害は熊本の比ではありません。都市部を流れる河川が同時に氾濫した場合、死者数は8万人を超える可能性もあります」

 球磨川(熊本県)では、川幅が狭くなっている場所で8mほど水位が上がり、川の水が堤防を越える『越流破堤』が発生した。これは東京の川でも起こりえることで、荒川には危険ポイントが存在する。

「荒川の大きな“弱点”といわれているのが、北区・赤羽の岩渕から、埼玉県川口市にかかる東北本線の鉄橋(荒川橋梁)付近です。ここは、地盤沈下により堤防が周囲よりも3m近く低くなっているんです。同様に、京成線の鉄橋が架かる京成関屋駅と堀切菖蒲園駅の周辺も、危険エリアです」(土屋さん)

 荒川と隅田川を仕切る北区の岩淵水門から、江東区・江戸川区の区境にある中川の河口まで、全長約22kmの人工的に開削された「荒川放水路」。その東側エリアは、厳重な警戒が必要だ。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン