誤解を生んでいるのがメディア各社の世論調査だ。バイデン氏を持ち上げる傾向のあるワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズ、CNNといったリベラル系メディアは、バイデン氏が10ポイント以上リードし、勝利の可能性が高いと報じている。だが、権威ある調査会社Real Clear Politicsは、リベラル系、保守系など各種の世論調査を集計して平均値を出し、バイデン氏のリードは8.7ポイントだとしている。この時期にこの差であれば、まだまだ行方はわからないと言うべきだ。そして、同調査では、最も影響の大きい激戦区の支持率の差をこう分析している。
ウィスコンシン州:47.8対41.8(バイデン対トランプ 以下同)
アイオワ州:44.5対46.0
ノースカロライナ州:47.3対 45.3
フロリダ州:49.2対 42.8
ペンシルベニア州:49.4対42.8
アリゾナ州:47.8対45.0
いずれも接戦状態である。これらの州でトランプ氏が勝てば、2期目が見えてくる。
筆者は、46年にわたり、アメリカ国内で大統領選挙を見てきたが、この時期の世論調査で現職が挑戦者に負けている場合、終盤に猛烈に追い上げるパターンが多い。さらに注目しなければならないのが「オクトーバー・サプライズ」である。大統領選挙の年、投票日直前の10月に、情勢を変えるような大きな事件が起こるというジンクスである。代表的な例として、1980年、現職のカーター大統領に共和党のレーガン氏が挑んだ時のケースが有名だ。イランでアメリカ大使館襲撃事件が起こり、人質救出に向かったアメリカ軍部隊が砂漠に墜落する大失態により、カーター氏の大敗北に終わった。
バイデン氏の楽勝を予想するメディアもあるが、筆者は、まだわからないと思う。バイデン氏がコロナ問題を解決できる能力は何も実証されていない。たとえ観客はいなくても、二人が同じ場所で、同じ時間を与えられ、どのような討論をするか見ものである。勝敗のカギは、トランプ氏の攻撃が、どれだけバイデン氏を苦しめ、選挙民を動かす効果があるかだろう。それに成功しなければトランプ氏の勝利はないだろうが、成功する可能性もまだまだ十分に残されている。