郷原氏(左)は検察庁の変化を指摘
長谷川:なるほど。事件化することはなかったわけですね、これまでは。
郷原:抑制的でした。選挙の実態として、特に地方に行けばお金のやり取りはあるんですよ。でも選挙から遠い期間は、あえて刑事罰の対象にしてこなかった。
長谷川:ところがなぜ、検察はやったのでしょうか。
郷原:法務省が機能停止状態になったから、歯止めが効かなくなった。だから、検察という権力と安倍政権という政治権力がぶつかったわけです。私はずっと権力の集中というものに警戒感を持ってきた人間です。その権力として一番中心に取り上げてきたのが、検察でした。でも最近は、安倍政権への権力の集中が、それと同等に大きな問題です。だから、黒川検事長定年延長問題や検察庁法改正問題について、安倍政権が検察という権力を支配下に収めてしまいかねないということ、それがいかに危険かということをさんざん訴えてきたんです。ところが今、検察庁法改正の見送りを機に、その逆の状態になってきた。
長谷川:言ってみれば、ハブとマングースの噛み合いですか(笑)。
郷原:これは決して意図した事ではないと思います。政権側にその意図はなかったし、検察もそんな意図はなかったんです。しかしもう始めちゃった以上、地盤培養行為的なお金のばら撒きを買収だとして刑事事件化した以上、その原資を提供した自民党本部側も捜査の対象とせざるを得ない。それによって、検察の権力と安倍政権の権力とが激しくぶつからざるを得ないと、私はブログで書いたのです。「検察はルビコン川を渡った」と。渡るつもりがあったかどうか分からないけれど、少なくとも渡っちゃったんです。「地盤培養行為」が買収罪になるというのであれば、それを認識して資金を出した側は、買収目的交付罪に当たるということにならざるを得ない。