テレビが権威を持ってしまった
元日テレプロデューサーで『中居正広のブラックバラエティ』や『全日本プロレス中継』などに携わった京都芸術大学客員教授の村上和彦氏は、昨今の番組が「視聴者を絞りすぎている」点が問題だと指摘する。
「『テラスハウス』にしても、それがリアルだと信じてしまう若い視聴者層に向けてのみ作っている。リアルとグレーのギリギリを攻めて、『くだらないけど本当っぽいな』と大人の視聴者に思わせる演出力が不要になってしまった。だから『リアリティ』という言葉の“含み”まで表現できない。
結果、『騙された!』という若い視聴者によって大炎上して、番組側も後手に回らざるを得なくなる。テレビが世帯から個人のものになった現代では仕方ない部分もありますが、少なくとも大人も見ている可能性があるということを想定して作っていれば、安易にリアルっぽさを売りにしなかったはずです」
虚実の境目を“ボカす”演出力の欠如──それもまた、「許されないヤラセ番組」が量産される一端なのかもしれない。吉川氏がこう話す。
「言ってしまえば、テレビが権威を持って、作り手も視聴者も“まっとうなもの”だと勘違いしてしまったんですね。コンプライアンス重視の風潮もそれに拍車をかけた。
でも、テレビは本来、遊びがあって、そんなに崇高なものじゃないんです。そこに立ち返らないと、同じことが繰り返されると思います」
※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号