世論を動かすことには長けているトランプ氏(AFP=時事)

 もうひとつ、77歳という高齢のバイデン氏が、再選まで視野に入れるのが常識の大統領選で、自分の任期と年齢についてどのようにプレゼンテーションするのかも注目しておくべきだ。もし常識を覆して「One-term President」(一期だけの大統領)を目指すと匂わせた場合、選挙民がどのように反応するか。かといって2期を想定するなら、2期目の就任時は82歳である。それから4年間、大統領を務めるというのは現実的な話なのか。トランプ氏も現在74歳だが、この3歳の差は実は大きい。

 高齢が疑問視された例として筆者が思い起こすのは、歴代2位の高齢(69歳349日)で選出されたれたレーガン大統領である。2期目の後半には、痴呆症ではないかと取り沙汰され、演説原稿を間違えて読み上げることもあった。年齢を適格性の材料にするのはあまり良くないことだが、トランプ氏がこの問題を徹底的に突いてくることは間違いないだろう。

 本選挙の1か月前の10月に選挙戦に大きな影響を与える出来事が起きるというジンクスを「October Surprise」と呼ぶが、これがバイデン氏の健康問題について起きる可能性もあると思う。前回の大統領選では、ヒラリー・クリントン女史の勝利が予想されていたが、ある時、演説の壇上で足がもつれたことがあった。それを共和党が「パーキンソン病ではないか」と攻撃し、その説が広がった。「大統領業務に支障をきたす。アメリカの緊急事態に大統領が動けないのではないか」と騒がれ、ヒラリー嫌いの人たちが一気に勢いづいた。これもOctober Surpriseであった。

 バイデン氏は、自らの力で民主党の大統領候補になったとは言えない。予備選の前半、バイデン氏は苦戦し、トランプ氏に対抗できる有力候補が見当たらない党内の状況を民主党主流派の重鎮たちは心配した。そこで、2月のサウスカロライナ州の予備選で、強力な黒人リーダーであるクライバーン下院議員にバイデン氏を推薦させ、ようやく予備選初勝利を達成させて、バイデン躍進の流れを作ったのである。民主党主流派のシナリオに乗った候補であり、本当の実力はわからない。

 支持基盤は、「反トランプ」の良識派と、社会主義的な政策を掲げるプログレッシブ派(進歩主義・革新派)の選挙民である。しかし、同じような支持基盤で圧勝したケネディ大統領やクリントン大統領、オバマ大統領のようなフレッシュさ、明敏な頭脳、情熱、リーダーシップを持った候補とは言えないのではないか。9月末に行われる最初のテレビ討論でトランプ大統領と互角にわたり合えば、バイデン氏の勝利は確実になると思う。逆に、それまでは予断は許さない。まだ選挙民が疑問を持っている「アメリカの大統領にふさわしい資質」を示せるかどうかである。

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