収束はいつになるのか(時事通信フォト)
「現在、日本で流行しているウイルスは、欧州株が流入したものに変異が加わったと考えられています。もともと新型コロナウイルスは不安定で変異しやすいRNAウイルスであり、いたるところで変異が起こる可能性があります。しかも現在は、ウイルスが人の細胞とくっつく『スパイクタンパク質』が感染しやすいように変異して、より感染力が強まったと考えられます」(一石さん)
感染力の「強変異」とともに指摘されるのは、ウイルスの「弱毒化」である。現在の死者数や重症者数は、感染拡大初期に比べて圧倒的に少ない。東京農工大学教授の水谷哲也さんが言う。
「そもそも感染症が広がる初期は強毒株ウイルスが優勢になりますが、その後、3密の回避やマスクなどの対策が取られると、強毒株は隔離され、再生産されることが少なくなります。すると弱毒株が優勢になって、症状が軽い人や無症状の患者が増加します。実際にいまは、死者や重症者が着実に減少していることから、ウイルスが弱毒化したのかもしれません」
ただし、敵が弱くなったからと油断は禁物だ。
「感染力が強く、毒性の弱いウイルスが広がれば、軽症者や無症状者が免疫を獲得し、再び強毒のウイルスが襲ってきた際に防御的に働く可能性があります。
一方、感染が多くの人に広がると、その途中でアメリカのように感染力が強く、毒性も強いウイルスが登場し、死者が出やすくなるかもしれません。基本的にウイルスは変異を繰り返すうちに弱毒化するケースが多いですが、凶暴化することが皆無ではないため、安心はできません」(一石さん)
水谷さんも警鐘を鳴らす。
「ウイルスの変異はランダムで、今後、強毒化する可能性を否定できません。特に感染者が増えると検査や隔離が追いつかず、どこかのポイントで強毒株が優勢に転じる可能性があります」
感染が落ち着くとされた夏に息を吹き返したウイルスだけに、温度や湿度が下がる秋、冬はさらなる警戒が必要だ。
「今後、気をつけるべきは、冬風邪と呼ばれるインフルエンザや従来のコロナが猛威を振るうことです。一般に冬風邪は夏風邪に比べて大流行し、肺炎や脳症を招いて重症化しやすいと考えられる。加えて新型コロナは低温、乾燥を好むとされるので今年の秋から冬は、冬風邪の手ごわいウイルスと新型コロナの『W襲来』が心配されます」(一石さん)
※女性セブン2020年8月20・27日号