インターネット経由で健康相談に応じる皮膚科専門医[LINEヘルスケア提供](時事通信フォト)
「遠隔健康医療相談」の例は、たとえば休日や夜間などに、医師や看護師などに病院を受診したほうがいいのかなどの判断を相談できる「子ども医療電話相談事業」(#8000)などが挙げられる。このようなサービスを使い、ほっとした経験がある人は多いのではないか。
LINEヘルスケアはこの「遠隔健康医療相談」に該当するため、診療や診断などはできず、あくまで一般論の話しかできないようになっている。しかし、このような違いが一般の人には十分に認知されているとは考えづらい。実際Twitterなどを見ると、オンライン診療を期待していたが、あくまで一般的な返答をもらうだけの結果にがっかりしたという人もいるようだ。
LINEヘルスケアで相談したことがある30代主婦は、「子どもが発熱と下痢が続いて心配だったが、このサービスを使ったことで安心できた」とサービスを高く評価する。「子どものことはつい心配になってしまうけれど、病院に行く必要があるのかどうかが判断できるだけでも安心できる。コロナでできるだけ病院に行きたくなかったし、助かった。タダだったけれど、むしろお礼を支払いたいくらいだった」。
一方で、同じく相談したことがあるという40代主婦は苦い顔をする。「色々聞きたかったのに、『はい』『いいえ』とかだけの答えが多くて。結局『病院を受診してください』と言われたので、正直がっかりした。今回は無料だったからいいけれど、お金を払ってこれだったら怒っている」。
この違いは、サービスの性質に合った相談ができているのかどうかによるのではないか。相談サービスとして利用できていれば満足できるが、診療や診断を期待して利用している人は不満を抱くこともあるのではないか。
専門医以外でも相談に乗れる仕組み
サービス側にも問題はある可能性がある。サービス上で内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科のどれを選んでも、おすすめ欄には同じような医師が並ぶ。どうも相談件数が多い医師が並ぶ仕組みであり、専門性で表示されるわけではないようなのだ。
さらに、若干首を傾げたくなる医師も見つかる。たとえば、相談に乗れるとしている診療科には「内科・小児科・産婦人科・整形外科・皮膚科・耳鼻咽喉科」とすべてを挙げているある20代医師は、プロフィールを見てみると専門分野は一般内科で、勤務歴は4年に過ぎない。医師ならすべての診療科に精通しているわけがない。つまり、専門分野や資格、経験などと診療科が一致していない医師もいる状態なのだ。
もちろん、経験や資格から信頼できる医師ということがわかる医師も多い。一方で、学会名を羅列しているだけの医師もいる。学会に入るには推薦が必要などの場合が多いが、医師免許がなくても入ることはできる。つまり、学会に入っていることは専門知識があることの証明にはならず、専門性に疑問が残るのだ。
つまり、元々サービス上でできることは限られていることがユーザー側に正しく伝わっていない、専門医以外でも相談に乗れることが、今回の問題につながっていると考えられるのだ。今後、サービスの性質についての認知徹底を図るとともに、サービス側で専門資格を持っている医師のみが該当科で相談に乗れるようにすることで、このような問題は改善されるのではないだろうか。
サービス無料とうたうことで確かに利用者は増えたが、医療サービスであり健康に大きな影響を与えるものだからこそ、やはり質が問われるべきだ。ディー・エヌ・エーの医療メディア「WELQ」が、医療監修者などをつけず医学的に誤った記事を多数投稿して問題になったことを忘れてはならないだろう。
遠隔から医療相談ができるサービスには大きな可能性があり、コロナ禍ではなおさらメリットがある。しかしまだまだ過渡期であり、問題が残っているように感じる。我々もそのようなことを知った上でうまく使うべきであり、サービス側は今回のような問題をチャンスと捉えて、利用者とのミスマッチが少ないオンラインの医療相談の実現をはかってほしい。