国内

佐藤優氏「国際連携が必要なのは五輪よりワクチン開発だ」

元外務省主任分析官の佐藤優氏(時事通信フォト)

 麻生太郎副総理から「呪われた五輪」とまで言われてしまった東京2020。果たして予定通り来年夏の五輪開催は実現するのだろうか。元外務省主任分析官の佐藤優氏(60)は次のように考える。

 * * *
 私は2つの理由から開催できないと考えています。

 第一に、開催のための必須条件であるワクチンの開発が間に合いそうにありません。問題なのは開発の遅れというよりも、ワクチン開発の国際協力が進んでいないことです。どこかの国でワクチンができたとしたら、争奪戦になってしまうでしょう。いま必要なのは、五輪開催のための国際協調ではなく、ワクチン開発のための協調なのです。

 第二に、自国での感染が拡がる中で、仮に開催しても「オリンピックに出よう」という機運が高まらない。多数の死者・感染者を出したアメリカやヨーロッパは感染に対する不安が蔓延し、中南米でも感染ペースが速まっています。中国のような権威主義体制の国は選手を参加させるかも知れませんが、全世界的なオリンピックになり得ないことが目に見えている。そうすればオリンピックそのものが成り立ちません。

 国家としての優先事項を考えたときに、オリンピックという国際的な事業は二次的、三次的な事項なのです。どの国も自国の感染抑止で手一杯になっている。開催に協力するメリットがありません。

 残るのは中止の判断をいつ下すかという問題になる。アメリカに「川を渡っているときに馬を乗り換えるな」という格言がありますが、コロナ禍の非常時は川を渡っている状況で、オリンピックの中止は馬の乗り換えにつながります。中止決定のタイミングを見誤れば、内政も外交も大混乱を招くでしょう。

【PROFILE】さとう・まさる/元外務省主任分析官、作家。在英大使館、在露大使館、外務本省国際情報局分析第一課などで勤務。

※週刊ポスト2020年8月28日号

関連記事

トピックス

キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン