国内

原爆きのこ雲はオレンジ色だった? AIなどを元に写真で再現

カラー化されたきのこ雲。1945年8月6日、広島市へ原子爆弾投下。元写真は呉市の吉浦町(現・若葉町)にあった海軍工廠砲煩実験部にて、尾木正己が撮影

 1945年8月6日に呉市の海軍工廠砲煩実験部で撮影された「きのこ雲」。歴史資料としてこれまで私たちが目にしてきた原子雲の姿は白黒で色彩を失っていたが、この写真ではもくもくと吹き上がる巨大な原子雲がところどころ生々しくオレンジ色に染まり、広島市の爆心地付近は熱線で4000度近くにも達したというすさまじい威力を物語る。75年前に世界で初めて核兵器が実戦で投下されたこの日、広島の人々の目に映ったきのこ雲はこんな姿をしていたのだろう――。

 この写真は東京大学学生の庭田杏珠さんと、同大大学院情報学環の渡邉英徳教授が共同で進める「記憶の解凍」プロジェクトの一環として、元はモノクロだった写真をAI(人工知能)技術などを用いて色付けしたもの。渡邉教授いわく、AIは人肌や空、海、山など自然物のカラー化を得意とするという。その一方で、衣服や乗り物などの人工物のカラー化は苦手で、仕上がりに不自然さが残ってしまうのだとか。

 そのためAIでの自動色付けはあくまで下色付けとし、戦争体験者との対話やSNSで寄せられたコメント、資料などをもとにした時代考証を踏まえて、自動色付けされた写真の色を手作業で補正していく。とても手間のかかる地道な作業で、完成までに数か月を要する写真もあるという。

 呉市で撮影されたきのこ雲の写真も同様の手法で色が補正された。

「きのこ雲を雲と認識してAIは当初、白く着色したんです。ところが白いきのこ雲をTwitterで公開したところ、戦時下の呉で生きるヒロインの姿を描いた映画『この世界の片隅に』の片淵須直監督から、きのこ雲はオレンジ色だったことなどのご指摘をいただいたんです。そのお話をもとに資料なども参考にしながら、慎重に色合いを補正していきました。今年の原爆の日前にも、色合いについて監督とやり取りしました。今後も補正を続けていきます」(渡邉教授)

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン