現在、臨床試験中の「心臓修復パッチ」
パッチを開発している頃、高木氏はドラマ『陸王』(TBS系)の取材でランニングシューズの素材を調べていた作家・池井戸潤氏と出会う。この出会いから『下町ロケット ガウディ計画』は誕生した。
「『ガウディ計画』では心臓の人工弁の開発が描かれていました。実は今年、うちでもパッチの材料や構造を応用することで、心臓人工弁の弁可動維持を可能化するための弁尖(べんせん)素材開発に取り組み始めました」
さらにコロナ禍のいま、マスクの生地製造などに加え、新たな試みにも着手しているという。
「要介護者の生体情報をシーツから読み取り、スマートフォンなどで遠隔から健康状態が常時把握できるようにする、スマートシーツシステムの開発です。非接触介護が可能となり、介護の人手不足解消にも繋がればと思っています」
技術はそれを使う人、必要とする人のためにある──。現実にも『下町ロケット』の佃製作所のような熱き思いと高い志を持つ企業は存在するのだ。
※週刊ポスト2020年8月28日号