ビジネス

『下町ロケット ガウディ計画』が現実のものとなる日

福井経編興業の高木義秀代表取締役

「自分たちの技術が、病気で苦しむ人たちの助けになるかもしれない」

 そんな高邁な精神で医療資材を開発している企業が、福井県にある福井経編興業株式会社だ。高木義秀代表取締役に話を聞いた。

「医療分野へ踏み出すきっかけは、『シルクで人工血管を編んでほしい』というある大学教授からの問い合わせでした。うちは2010年にシルクの糸を編み込む技術を開発したのですが、切れやすい天然繊維をハードな機械で編み込むことは、当時、他社では真似できない技術だったんです」

 高木氏は試行錯誤の日々を経て、小口径人工血管の開発に成功。その後、この技術をメディアで知った大阪医科大学の根本慎太郎教授から連絡を受け、次に開発に乗り出したのが、「心臓修復パッチ」だ。

「パッチは先天的に心臓に病気がある子どもの手術に使います。現在の素材では劣化や伸展性に課題があり、5年間に約50%もの子どもが再手術を受けなければならない。それを回避するため、成長に対応して伸びていく布素材のパッチ開発がテーマでした」

 福井経編は2017年5月に医療機器の国際品質規格の認証を取得。これは繊維メーカーでは国内初のことだった。同年7月には日本医療研究開発機構(AMED)による補助金も獲得し、開発は急ピッチで進む。2019年5月には臨床試験が開始された。

「パッチは再来年の薬事申請を目指しています。我々のような中小企業が高度な医療資材を開発することは大きなリスクを背負うことでもあります。常に命の大切さと向き合いながら、なんとかここまできました。1日でも早く販売し、患者の身体的、経済的負担を少しでも軽減したい」

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン