国内

「過疎をとるか核をとるか」人口2900人、北海道寿都町の苦悩

日本海に面した寿都湾の朝(時事通信フォト)

日本海に面した寿都湾の朝(時事通信フォト)

 北海道の日本海側、渡島半島の付け根にある人口2900人の小さな町が「核のゴミ」問題で大揺れだ。核のゴミの最終処分場候補地選定に向けた国の文献調査に、北海道寿都(すっつ)町の町長が突然、応募を検討する方針を表明し、8月13日に表面化したことから大騒ぎとなっているのだ。漁業と水産加工業の町にいったい何が起きているのか──。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。

 * * *
 核のゴミとは、原発で使用後の燃料を再処理する過程で出る強い放射能を持つ「高レベル放射性廃棄物」。ガラスで固めて特殊な容器に入れ、地下300メートルよりも深いところに貯蔵する計画だが、処分地を巡っては候補地さえ出てきていない状況だ。

 3年前には経済産業省資源エネルギー庁が、どの地域が処分場に適しているかを色分けした「科学的特性マップ」を公表したが、それでも名乗りを挙げる自治体は出てこなかった。将来的な汚染を懸念し、どこも引き受けたがらない施設なのである。2007年に高知県の東洋町が調査受け入れを表明したものの、住民の猛反対で撤去した。それっきり、どの自治体も手を挙げようとしてこなかった。

「核のごみ」処分場に適したエリアを色分けした北海道のマップ(資源エネルギー庁)

「核のごみ」処分場に適したエリアを色分けした北海道のマップ(資源エネルギー庁)

 そんな閉塞状況のなかで、突如として出てきたのが寿都町の片岡春雄町長(71)の前向き発言だ。町長はメディア各社の取材に、「コロナで相当この町も痛めつけられて、来年度以降の財政はどうなっていくのか。(調査の)交付金をうまく活用できればありがたいよね」などと語っている。

 町長が応募の意向を示した文献調査は、歴史的文献で過去に起きた地震の有無などを調査するもので2年程度かかる。その後、ボーリングなどの概要調査(3年)、精密調査(約14年)を経て最終処分地の建設地を決定するという流れとなっている。

 寿都町は、その第一関門の文献調査に向けて、8月26日に町議会議員や漁協をはじめ産業団体の代表者ら約30名を集めて意見交換会を行う予定だ。

関連記事

トピックス

新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン