「ダム効率運用の第一歩になる」
一般国民からすれば、治水に協力してくれる事業者に対し、感謝すべき案件と言えるのかもしれない。
ただ、貯水量だけ見れば倍増だが、治水を目的に作られていない発電ダムや利水ダムが実際に戦力になるのかという疑問もある。
一般に発電ダムや利水ダムには大型の放流設備がないため、ダムを空にするには数日程度の日数がかかる。突発的な集中豪雨には対応できないのではないか。
「ゲリラ豪雨は、都市部のヒートアイランドが原因で局地的に起きることが多いので、ダムによる治水の範疇ではありません。やはり台風や線上降水帯(積乱雲が連続して発生して線状に並び、停滞して集中豪雨を発生させる)による豪雨がターゲットで、これらはある程度正確に予測ができるようになったので、さほど問題はない。仮に気象予測がはずれて事業者が損害を被った場合は、国が補償することでクリアできます。また、放流設備は後から追加でき、ダムの水を抜かずに工事する技術もあります」(竹村氏)
発電ダムの場合、水を大量に貯めるのが目的ではないため、土砂が溜まっていて実際の貯水量は少なかったりするが、これも「浚渫(しゅんせつ。水底の土砂を取り除くこと)の費用を国が負担すればすむこと」(竹村氏)という。
「私は今までダムのかさ上げや効率的な運用を主張してきましたが、今回の措置はその第一歩となると考えています。政治主導の判断を高く評価します」(竹村氏)
これにより、少しでも水害が減ることを祈りたい。
●取材・文/清水典之(フリーライター)