前走、前々走のレースぶりは芳しくない。3年前に勝ったきり低迷が続いている。不良馬場だし、他に先行力のある馬が複数いる。静観妥当だろう。
しかし。×を付ける手が止まる。孤高の◎が私を見つめている。もしこのポツンが来たらどうすんだ。ヒジョーに後悔するだろう。ポツンの誘惑である。パドックも返し馬もまずまずだったし。
そこで複勝に乗ったのだが。無難に出て後位追走、直線で頑張ったものの7着。先行した3頭ですんなり決まった。頭を冷やせば、先行力に欠ける人気薄が不良馬場でどうか。トラックマンがポツンを打った時点では馬場状態不明なのである。でもこの6歳牝、ガチっと記憶に残す。良馬場で好走するかもしれない。
ポツンがスカだった場合、すんなり納得してしまう。前回に触れた「◎の鈴なり」がスカを食らうこともあるだろうし。
さて、◎がばらついている場合、誰かしら的中しているはずでは。いや、完全スカも当然ある。完全スカ率とは? 意地の悪い試みではあるが、思いついたらやらずにいられないのだった。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年9月11日号