政治学者・法政大学教授の山口二郎氏
山口:「君臨すれども統治せず」ですね。ただし、政権末期はその綻びが目立っていたように思えます。特にコロナ危機以降は、「マスクの全戸配布」「学校の9月入学」など、忖度官僚とか官邸官僚と呼ばれる人々が何か思いつきで提案しては失敗し、それを繰り返した。政府としてグリップが効かない状態で漂流していた感じがします。
しかし、「(政策の失敗ではなく)病気でやむなく退任」と強調されている以上、後任が安倍機関による政治を否定するのは極めて難しい。
佐藤:その通りです。病気についてあげつらうことは人間性が問われるという日本人の感覚として、後任は安倍機関のシステムにいた人にならざるを得ない。菅さんであれ岸田さんであれ、構造は大して変わりません。
【プロフィール】
●さとう・まさる/1960年生まれ。作家、元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館書記官、国際情報局主任分析官などを経て現職。著書に『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)、『知性とは何か』など。
●やまぐち・じろう/1958年生まれ。法政大学法学部教授。東京大学法学部卒業。北海道大学法学部教授、オックスフォード大学セントアントニーズ・カレッジ客員研究員などを経て現職。専門は行政学、現代日本政治論。著書に『民主主義は終わるのか』、『政権交代とは何だったのか』など。
※週刊ポスト2020年9月18・25日号