不妊治療への保険適用でどう変わるか
不妊治療には不妊の程度によって、夫婦生活のタイミング法や排卵誘発法、人工授精、さらには体外受精や顕微授精などさまざまあり、費用にも大きな幅がある。このうち、人工授精、体外受精、顕微受精については健康保険が適用されず、もっとも高額な高度生殖医療(体外受精、顕微受精)では1回に30万〜60万円かかるとされる。
ただ、体外受精や顕微受精による出産成功率は20%前後とされ、失敗すると2回、3回と繰り返すことになるので、費用は膨れあがっていく。Webメディア「妊活ボイス」が2017年10月に実施したインターネットによるアンケート調査によると、高度生殖医療でかかった平均費用は約193万円だという。金額や成功率から類推すると、4回から6回程度は実施するケースが多いのではないか。
とはいえ、不妊治療にかかる費用を全額自己負担するわけではない。不妊治療には国や自治体による公的助成があり、たとえば東京都の場合、「国からの助成金に都の独自の助成金を加え、初回は最大で30万円、2回目以降6回目まで最大で25万円が出ます。年齢や夫婦合算の所得などさまざまな要件がありますが、予算に上限はなく、要件を満たしていれば支給されます」(東京都少子社会対策部家庭支援課母子医療助成担当)という。
仮に6回実施して助成金を最大限もらったとすると155万円となる。費用に幅があり、人によって成功するまでの回数も異なるので、一概に比較はできないが、単純に差額を出すと自己負担は40万円程度となる。
これが菅氏のプランによって「健康保険適用」になると3割負担になり、さらに前述した高額療養費制度が利用できれば、年収約370万円〜約770万円の人の場合、元の費用が1回30万〜60万円と幅があっても、自己負担額は1回(1か月)8万円強に収まる。細かい計算は省くが、仮に4回なら約32万円前後、6回なら5回目以降は自己負担額がさらに減額されて上限が1か月4万4400円になるので、自己負担の総額は41万〜42万円程度となる。
現行の助成制度と自己負担額はそれほど変わらないように見えるが、今は自由診療のためクリニックによってかかる費用の幅が大きいのが実情だ。保険適用となれば、不妊治療がある程度まで標準化され、全体的な費用が安くなるメリットは期待できるかもしれない。