少子化の原因は「母親が減ったから」
出産費用ゼロも不妊治療の保険適用も、どちらもそれほどインパクトは大きくないうえに、そもそもこれらの施策が少子化問題の解決に寄与するのかと言えば、それはまた別の問題である。『結婚滅亡』の著者で、独身研究家の荒川和久氏はこう語る。
「不妊治療の保険適用や出産費用ゼロが実現しても、それで『もう1人産むか』とはなりにくいので、焼け石に水でしょう。
15〜44歳までの既婚女性が何人子供を産むのかを1985年と2015年で比較(国勢調査)すると、子供なしの夫婦は約2割、子供1人は約3割、2人は約4割、3人は約1割で、この比率は変わっていなくて、昔も今も既婚女性が産む子供の人数は同じ。貧乏子沢山というイメージがありますが、そうでもなく、所得が高い世帯でも低い世帯でも子の数の比率はほぼ同じなのです。
ではなぜ、少子化が起きているかというと、1人の母親が産む子どもの数は変わっていないが、そもそも母親の絶対数が減ったからです。1人以上の子を持つ44歳までの母親数は、1985年時点の1334万人から、2015年には805万人へと、約530万人も減少している。少子化とは“少母化”の結果なのです」
つまり、子供の数を増やすには、出産や子育てに支援をするより、初婚の婚姻数を増やさないといけないという。
「岸田氏は『結婚についてもさまざまな後押しをする』と発言しているので、問題の本質を理解しているのかもしれません。しかし、個人のライフスタイルに関わる問題なので実際は非常に難しいし、すでに時期を逸しています。若年層人口が減っている中で、仮に結婚が増えてもここから挽回して人口増に転じるのは極めて難しいと言わざるをえません」(荒川氏)
人口減少に対する特効薬と言えるものはなさそうだ。
●取材・文/清水典之(フリーライター)