新型コロナウイルスの影響で人手が少ない夜の新宿(EPA=時事)
横尾さんの店に「堕ちた」と自嘲気味に話すのは、元ガールズバー従業員・まりもさん(仮名・24才)。
「こう言う店だけはイヤ、と思ってガールズバーで働いていたけど、お店が潰れてどうにもならなかったです。でも、このお店で働いても、お客さんはあんまり来ない。ここだけで働いても生活できないから、店長に言って、他の系列店でも働いています。女の子は毎日たくさん出勤してるのに、呼んでくれないから、ずっと待機部屋で携帯いじってるだけ」(まりもさん)
実はまりもさん、昨年末より就職活動をはじめ、一月には旅行添乗員の派遣会社に採用が決まっていた。得意の語学力を生かし、日本にやってきた外国人旅行客を案内する仕事であり、それはまりもさんの長年の夢でもあった。だが、採用は直前に白紙になり、派遣会社はすでに潰れてしまった。
「こんな状況でも来てくれるお客さんを大事にしようって、本当は有料のサービスを無料にしたり、制限時間を無料で延長したりしているんです。私は最近、仕事を始めたばかりだからこんなものかと思ってやっているけれど、以前からいる従業員たちは、ただでさえギリギリでやってきたのにと、不満の声を上げています」(まりもさん)
こうした現状について、横尾さんも苦々しい表情を隠さない。
「大変な仕事なのは理解してますが、客がゼロになったらもっと辛い。女の子たちにはそう言って働いてもらっていますが、コロナ前は普通だったのに、コロナ以降、精神的におかしくなってしまう子は本当に増えました。理由は様々だとは思いますが……。コロナが続く限り、この仕事を続けなければならないのかと、泣きながら相談されたこともありました」
芸人・ナインティナインの岡村隆史が、自らのラジオにて、風俗従事者の女性について差別的な発言をし大騒動になった。しかし今、その岡村発言が残念ながら、現実に起きていることをほぼ言い当てていたと認めざるを得ない。あの時、岡村が責められるばかりでなく、そうした不幸な境遇に会う人を一人でも減らせるようにという議論があれば、何かが変わったのだろうか。