秋葉原の路上に立つメイド姿の女性。かつてはこのようにビラ配り程度だった(時事通信フォト)
本城さんの店を出た瞬間、黒と白のメイド服姿、チラシを手にキャッチ行為に励む女性に声をかけられた。近くのメイドカフェの従業員、約一時間いて数千円、ソフトドリンクとビールが飲み放題だというが、驚いたのはその声かけの方法だ。
「お兄さん、私もう死にそう。お金ないんだもん、本当に困ってるの。自殺したら嫌でしょう?」
こんなことを猫なで声で突然言われたのだから、呆気にとられるしかなかった。自称女子大生で、コロナの影響で仕事がなく、感染は怖いが頑張っていると言う。また、しきりにサービスをする、と強調する。どんなサービスなのだと問えば「癒してあげる」とのこと。手を引っ張られた瞬間に思わず、条例違反ですけど話を聞かせて、と声をかけると……。
「あ、警察かマスコミの人? 邪魔だから来ないでね」
こういってにこやかな笑顔を作り、足早に路地裏に消えていくのであった。本城さんが続ける。
「彼女たちにも生活があるのはわかるけど、どんどんエスカレートしてるよ。映画やドラマで出てくる、東南アジアの夜の歓楽街があるじゃない? あれと一緒。コロナの前より客引きの女の子が多いんじゃないか、とも商店街の人と話しているよ」(本城さん)
不景気になったら街が賑やかになるという皮肉。生きるためには、なりふりかまっていられない、というのも理解はできる。ただ、このまま行為がエスカレートすれば、悲惨な事件が起きるのも必至。いくら当局が締めつけても、報道が取り上げても、彼女たちはまた帰ってきた。排除するだけではない、もっと本質的な部分にある問題を捉えないと、彼女たちも、住民や街の不安も消えることはない。