10年あまり前に、NHKが受信料を値下げした例がある。キーマンはやはり、当時総務相を務めていた菅氏だ。

 2007年、総務相を務めていた菅氏は、NHK改革の一環として、受信料を2割引き下げるようNHKに要請していた。その後、政権交代など紆余曲折があったが、2012年10月1日にNHKの歴史上初の受信料引き下げが実施され、120円下がった(地上・衛星契約、口座振替・クレジット払いの場合)。

 その後、2016年には籾井勝人会長(当時)がNHK経営委員会に50円程度の値下げを提案したが見送られた経緯がある。

 この10月からは、インターネット同時配信の実施条件として値下げを求められていたことを受け、60円下げられて月額2170円(同前)となることになっている。が、それでも「携帯料金は格安スマホという代替選択肢があるが、テレビを持っているだけで強制的に徴収するNHKの値段は高すぎる」という意見は多い。

NHKが映らないテレビ

 この受信料制度に一石を投じる裁判の判決が今年6月に出た。東京都内の女性が「NHKの映らないテレビ」を自宅に設置し、受信契約を結ばないことを求めた裁判で、東京地裁は女性の主張を認める判決を下したのである。まだ一審でNHKは控訴したが、NHKが受信料支払いを巡る裁判で負けたのはこれが初めてだ。

 この「NHKが映らないテレビ」とは、NHKの信号だけを減衰させるフィルター「イラネッチケー」を“取り外せない状態”で設置したテレビだ(外せるとNHKが映ることになり、受信契約をめぐる裁判に勝てない)。「イラネッチケー」を開発した筑波大学システム情報系の掛谷英紀准教授は、受信料の問題についてこう語る。

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