「NHKは、生活保護世帯や障害者のいる住民税非課税世帯に対しては受信料の減免をしていますが、世の中には受信料を払えないからテレビを持てないという貧困世帯が他にもたくさんあります。若者のなかにも受信料の負担が大きいからテレビを持たないという人が増えている。
NHKはさまざまな番組で貧困問題を採り上げていますが、自分たちができることについては知らんふりです。(テレビが持てないことで)民放のヒーローものやアニメが見られない子供も実際にいるのです」
しかし、完全にNHKが受信できないとなると、それはそれで災害時などに不都合を生じるのではないか。たとえば、報道系とエンタメ系に部門を分割し、受信料を値下げして報道系を賄い、エンタメ系はスクランブルをかけて有料チャンネルにするのはどうか。
「災害情報は民放とインターネット、それからラジオで十分だと思います。そもそも停電になったらテレビは映りません。
NHK改革についてはさまざまな案が出ていますが、私は、受信料を強制徴収するのだから、NHKの理事や会長は契約者による選挙で選ぶ方式にするのが当然だと思っています。そうなれば、改革して受信料を下げるという公約を掲げた人が選ばれますが、NHKは今の利権を死守するのみで、絶対にそうした改革はしません。国会議員もNHK改革を主張すれば、国会中継で映してもらえなくなって選挙に影響するので改革には及び腰です。
この状況に風穴を開けられるのが、『NHKが映らないテレビ』で、司法の良心に期待しています」(掛谷准教授)
武田総務相は初登庁時の会見で、NHKのラジオのチャンネル数や、徴収コストが高いといった課題を指摘したうえで「受信料についても見直す余地がある」「国民が納得し愛されるNHKになってもらいたい」と述べた。
果たして菅首相は既得権益の固まりであるNHKに切り込めるか。
●取材・文/清水典之(フリーライター)