トランプ大統領らを提訴した姪のメアリー・L.トランプ氏(Avary L. Trump)
〈祖父は子どもたちに利益を落とすために、1960年代にミッドランド・アソシエイツ社を創立し、子ども一人につき、〈サニーサイド・タワーズ〉を含む8棟の建物の15パーセントの所有権を与えた。完全な詐欺とまではいえないにしても、明らかに違法な資産譲渡だ。その目的は、正式な譲渡で課せられるはずの贈与税の大半を免れることだった〉(メアリー・トランプ『世界で最も危険な男』より)
1999年に祖父フレッドが亡くなると、メアリー氏とその兄フリッツは、叔父たちから「祖父の遺言書にサインするようにと求められた」という。しかしそれは、孫であるメアリー氏と兄にとって見過ごせない内容だった。
〈私と兄は、本来権利があるはずの相続権を奪われた。祖父は、父が生きていたら受け取れたであろう20パーセントの取り分を孫である私と兄に分配するのではなく、生きている4人の子どもたちに平等に分けてしまったのだ。孫に遺された遺産は私たちに分配されたが、それは叔父や伯母たちが相続した遺産に比べれば微々たるものだった。祖父の遺産全体から見ればきわめて少額だったために、私とフリッツには異議を唱える権利があった〉(同前)
当時、メアリー氏が直接やりとりしたのは、トランプ氏の弟でメアリー氏の叔父にあたるロバート・トランプ氏(今年8月に死去)だった。彼らとメアリー氏側の話し合いは平行線のまま進み、メアリー氏とその兄フリッツは、祖父の遺言書の無効を訴えて訴訟を起こすことを決める。すると、相手方である叔父や伯母マリアン(トランプ氏の長姉。元第3巡回区合衆国控訴裁判所裁判官)たちから、思いもよらぬ仕打ちを受けた。
〈生まれてからずっとトランプ・マネジメント社によってかけられてきた私たちの医療保険(トランプ家の一族は全員これによって医療費を保証されていた)が解約されていた。兄は息子ウィリアムの払いきれないほど高額な医療費の支払いをこの保険に頼ってきた〉
〈私たちの医療保険を無効にするというのはマリアンの考えだったが、それによって彼らが得をするわけではない。ただ、私たちにより多くの痛みを与え、精神的に追い込もうとする作戦だった。そのころにはウィリアムも退院していたが、それでもまだ発作を起こしやすいことに変わりはなかった。心拍停止状態になり心肺蘇生法でかろうじて助かるということもあったほどだ。ウィリアムにはいまも24時間体制の看護が必要なのだ〉(同前)