当時の30~40代はこうしたツールが登場すると目を輝かせて試し、いかにしてマーケティングに使えるかを力説する。かくして「攻略本」出版に至るのである。彼らはネットの黎明期に若者で、とにかく夢のツールであるネットの可能性を信じてきたし、新しいものは何でも試してみたい。その貪欲というか純粋過ぎる姿に、「ネットなんて当たり前の存在」としか思っていない今の若者がドン引きしているのだろう。その総本山がフェイスブックである、という見立てを私はしている。
とはいっても、フェイスブックにも使い勝手が良い面はある。現在引っ越しの準備をしているが、家のほとんどのものは処分しようとしている。だが、あまりにも巨大なものは処分費用もかさむ。地元の人にあげたり売れる「ジモティー」というアプリはあるが、やはり知り合いにあげたいもの。フェイスブックで2mもある「さすまた」と130kgほどはあるベンチプレスセットを「あげます」と書いたら見事に名乗り出る人々が登場。さすがの金持ちオッサンなもので巨大高級自家用車で取りに来てくれる。こうした面ではオッサンコミュニティバンザイ、である。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。近刊に『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。
※週刊ポスト2020年10月9日号