国内

持続化給付金詐取 SNSで受給を募った「ビジネスマン」の正体

給付金不正を警告する中小企業庁アカウント(時事通信フォト)

給付金不正を警告する中小企業庁アカウント(時事通信フォト)

 リスクを冒さなければリターンは得られない。確かにそれは真実ではあるのだが、公金の詐取に関わるリスクを負うことは、マイナスにしかならないのではないか。ところが今、予想外の規模で公金の詐取に関わった人がいると明るみに出つつある。個人事業主なら最大100万円を受け取れる持続化給付金の受給をSNSで盛んに申請を呼びかけ、結果として多くの不正受給事件を生み出したネット上でのビジネス成功者は、いったい何者なのか。ライターの森鷹久氏が、インスタグラムで持続化給付金の受給を呼びかけた人物を直撃した。

 * * *
「犯罪かどうかと言われれば、悪い部分もあるかもしれません。でも僕は法律的には『善意の第三者』です。警察にも話したが、逮捕されていない。僕は犯罪者じゃないんですよ」

 東京都江戸川区の「事務所」で筆者の取材にこう答えたのは、5月頃に自身のSNS上で「誰でも持続化給付金が受け取れる」などと書き込んでいた自称IT系会社の代表・野本優氏(仮名・30代)である。「自称」としたのは、野本氏が主張する「株式会社」の法人登記が確認できず、かつ、野本氏が本当にIT関連の仕事をしているか、その実態が見えてこないためである。

 筆者が野本氏の存在を知ったのは、沖縄の地元紙・沖縄タイムスの社員ら関係者数人が「持続化給付金」を不正受給していた件について取材していたことがきっかけだ。沖縄タイムスの社員ら、さらに沖縄県内在住の複数の男女が、沖縄県那覇市内の税理士・X氏に架空、もしくは虚偽の「確定申告」を依頼。その書類を別の第三者に渡すなどして持続化給付金を不正に受け取っていたとみられる。X税理士は沖縄県警の事情聴取も複数回受けており、筆者もX氏の事務所に何度電話したが、本人に取り次いでもらえることはなかった。X氏の話を直接、聞くことはできなかったが、その事務所に架空の確定申告を頼みに行ったというAさん(20代男性)の証言を得ることができた。

「職場の先輩に『100万円もらえる』と聞いてXさんの事務所に行ったところ、周辺には車の行列ができていました。女の職員さんが整理券を渡していて、一度家に帰って、改めて事務所を訪れました」(Aさん)

 Aさんは、那覇市中心部の繁華街にある飲食店の従業員。Aさん以外にも、店からは5~6人の同僚がX氏の事務所を訪れていたと話す。

「緊急事態だし、申請すればもらえるもの、というように上司から説明されました。行列を見て本当に誰でももらえるのだと思いました。上司はネットビジネスもやっていて、有名なビジネスマンも給付金が入手できると言っていると、インスタグラムの画面を見せてきました」(男性)

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン