事故物件のもう一つのメリットが、リフォームの徹底だ。
「自殺現場が浴室でも、居室全てをフルリフォームするのが基本です。壁紙や水回り、可能な場合は間取りも変えて、新品同様の安心できる居住空間を提供しています」(前出・昆氏)
ただし、事故物件のリフォームは“見えない部分”が重要だという。前出・成仏不動産の担当者が言う。
「当社では施工を徹底していますが、特殊清掃という技術がしっかりしていないと入居後に不快な思いをすることが稀にあります。床材の下まで染み込んだ腐臭の根源は、特殊な薬品で完全に除去しないと『におい戻り』が発生するケースがあります。そのため入居希望者は事故物件で起きた出来事の詳細を把握して内見の際に注意深く物件を吟味したほうがいいでしょう」
「気にしなければお得」に思える事故物件だが、実際に住んでみると思わぬデメリットもある。「事故物件住みます芸人」として知られ映画の原作本著者でもある松原タニシ氏が自らの体験を明かす。
「事故物件に住んでいると、近所の住人に避けられていると感じることがよくあるんです。とくに団地などでは、古くから住んでいる人たちが事故物件であることを皆知っているので、どうしてもそうした視線を感じてしまう。“ヒソヒソ陰口を叩かれると気分が悪い”という繊細な人には向いていないですね」
メリットに目を向けるか、デメリットにこだわるかでまるで評価が変わってくる事故物件。住んでみたいと思いますか?
※週刊ポスト2020年10月9日号