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松本人志の『FREEZE』を見てみちょぱに申し訳なくなった理由

「みちょぱ、ごめん!」が第一声(イラスト/ヨシムラヒロム)

「みちょぱ、ごめん!」が第一声(イラスト/ヨシムラヒロム)

 かつて、何かを「我慢」する様子は、テレビのバラエティ番組として人気を集めるジャンルだった。だが、アクシデントや事故が多発して一般人が参加するタイプの番組が制作されなくなり、その後は入念に準備をした番組と大きなリアクションをとる芸人だけで構成されるものが放送されていたが、それも最近ではほとんど見られなくなった。「我慢」を競い、その様子を見せる『HITOSHI MATSUMOTO presents FREEZE』(Amazonプライム・ビデオ)のシーズン2を見て、イラストレーターでコラムニストであり、松本人志のお笑い論を信奉してきたヨシムラヒロム氏が、みちょぱに申し訳ない気持ちになってしまった理由について考えた。

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「みちょぱ、ごめん!」

 Amazonプライム・ビデオのオリジナルコンテンツ『FREEZE』の新作を観て、抱いた最初の感想である。2年ぶりに配信された松本人志がプロデュースする目玉コンテンツにも関わらず、笑い以上に後味の悪さが残った。終始、「どこを楽しめばいいのか……」と考えてしまった。

 松本考案の『FREEZE』とは文字通り「動くな!」をテーマにしたゲームである。参加者は無機質な部屋に置かれた椅子に腰掛け、腕を組む。この状態が『FREEZE』の基本姿勢となり、様々な仕掛けに耐えていく。最も動かなかった人、驚かなかった人が勝者となる。参加者にショックを与えるため、様々な仕掛けが予告なく動き出す。マジックハンドに付けられた電気ショックが痛覚を刺激し、マネキンから吐き出される白く臭いゲボが顔面を汚し、ピストルはいきなり空砲を鳴らす。生きたカエルや老人の口から出されたばかりの入れ歯が口に押し付けられることも……。

 動いてはいけない状況下でハプニングが起き、それに反応をしまいと必死で取り繕う不自然さから生まれる笑いに注目する。要するに、『FREEZE』は人が我慢をしている様子を楽しむコンテンツだ。

「どんな仕掛けが出てくるんだろう」「どんな顔で我慢するんだろう」といった部分が笑いのキモである。いま主流となりつつある「誰も傷つけない笑い」の真逆、誰かを傷つけて笑うスタイルともいえる。タレントが何かしら傷つけられた結果、生まれる笑いである。そういったことに関し、個人的には嫌悪感を持っていないタイプだと自認しているが、『FREEZE』の場合は工夫がなさすぎる。直に身体を傷つけ、そのリアクションを楽しむ。それを無邪気に笑うことはできなかった。生み出される笑いは前時代的、いやレベル的には中学生のいじめと同等である。こんな僕でも「う~ん」と唸ってしまった。

 構図がいじめに近いことから、シーズン1には多くのクレームも寄せられたそうで。シーズン2では前作ではジャッジマンに徹していた松本も参加者となっていた。

 前作は個人戦だったが今作からはチーム戦へと変更され、芸人チーム(松本人志、藤本敏史、小峠英二、せいや)、女性チーム(大島美幸、野呂佳代、丸山桂里奈、みちょぱ)、チャンピオンチーム(武蔵、真壁刀義、本間朋晃、亀田興毅)による勝ち残り戦が繰り広げられた。

 視聴者の興味は「今回から参加者となった松本がどのようなリアクションをとるのか」に集まっていたと思う。しかし、その期待はあっさりと裏切られた。全9試合のうち、松本は第3試合に参加をする。松本、みちょぱ、本間の三つ巴の戦いで、あっけなく松本は敗退する。『FREEZE』の最大の魅力である仕掛けに怯えつつ耐える表情や負け顔を当の松本がほとんど見せていない。

 敗退後は、『FREEZE』に恐怖する芸人チームメンバーに「もう顔からして負け顔になってるなぁ!」「全然アカン、もうリアクションしてもうてるよ!」と上から目線でコメントをする立場に落ち着いた。松本が番組を盛り上げるためにやっていることは百も承知だが、視聴者からすれば「すぐに負けたお前が何を言うとるねん!」とツッコミたくもなる。大晦日恒例となった『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ制作)の「笑ってはいけないシリーズ」では、松本自身が我慢できずに次々と罰ゲームにさらされて、後腐れなく笑えるのに……。

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