『恐怖新聞』での演技が注目の黒木瞳(写真/時事通信社)
続く第6話でも、歌子は愛用の特大すりこ木棒で、勇介の頭を何度もぶん殴り、「もう少しで殺せたのに」と言いながら逃走。実家を訪ねた詩弦に「いるんでしょ」と言われると、「バレた?」とひょっこり姿を現し、言った言葉が「コーヒー飲む?」
ひーっ、娘に自分がしたことがバレてもこの落ち着き。「次、誰殺す?」「スッキリするわよ」って、歌子ママ、表情ひとつ変えずに言える言葉じゃないですって。まったく恐ろしいばかりだが、ホラー好きという黒木は2002年、中田監督の映画『仄暗い水の底から』、続いて2007年には、映画『怪談』にも主演している。名作怪談落語が原作の『怪談』で、黒木演じる富本節の女師匠は傷を負った顔を半分隠しながらぬーっと現れたり、ぐったりしながらじーっと男(尾上菊之助)の顔を見つめたり、逆顔芸で怖さを醸し出していた。思えば、「このあと女房を持てば、かならずとり殺す」という師匠の書置き通りに次々女たちが死んでいく展開は、『恐怖新聞』に通じている気もする。
宝塚時代に培った華麗な表現力を封印して、不気味モード全開。表情筋の制御という意味では、これもまた俳優の力技といえる。10日の最終回でも歌子はまだまだ仕掛ける様子。『恐怖新聞』というより「恐怖歌子」になってきた。黒木瞳に奥深さを感じずにはいられない。