バイデン氏はメディアとも有権者とも「ディスタンス」がある(AFP=時事)

 バイデン氏への「消極的支持」が世論調査に表れているとすれば、実際の選挙結果は異なる可能性もある。「トランプがでたらめだから投票しない」という有権者も多いのである。バイデン氏の票が予想通りになるとは言い切れない。

 マイケルは「確固たる根拠はない」と言ったが、両陣営の今後の戦略について興味深い情報を持っていた。トランプ陣営は、最後の大勝負をかけるために、かつてない規模の戸別訪問キャンペーンを準備しているというのである。陣営と共和党は、これに懸けているのだという。マイケルは、それ以上は知らないと言ったが、人海戦術をかけるとすれば、ペンシルベニア州やフロリダ州など、激戦区で、かつ本選挙で投票権を持つ「選挙人」の割り振りが多い州に集中するだろう。

 もちろん、戸別訪問したからといって簡単に支持がひっくり返せるわけではない。対面で説得できる材料が必要だ。マイケルとそんな会話をしたあと、「これか?」と感じさせるニュースが飛び込んできた。トランプ氏が4年前の大統領選挙でロシアの支援を受けていたという「ロシアゲート」が、実はヒラリー陣営とオバマ前大統領、そしてCIAによる捏造だったという真偽不明の情報である。この手の陰謀論は、メディアやSNSで流しても反論が出て泥仕合になるだけだが、戸別訪問でうまく説けば有権者に信じさせることもできる。バイデン氏の人気がないことを考えれば、「民主党は汚い手を使ってきた」と信じさせるだけでいいかもしれない。

 いよいよ最終章に入った「嫌悪と憎しみ」のアメリカ大統領選挙である。

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