スポーツ

高橋尚子「何かしらの努力を世界一やった人が栄光を掴める」

シドニー五輪では2時間23分14秒のオリンピックレコード(当時)で優勝。笑顔でゴールテープを切った

 最初は、「その程度で日の丸なんてつけられるわけがない」と思いましたが、聞いた以上、やってみようと思って、そのときから毎日、みんなより3本多く練習するようにしました。

 よく考えると、1日たった3本でも、1週間続ければ21本、1か月で84本になるんです。誰しも一気には強くはならないけれど、毎日、少しずつ努力することはできるんです。その後も、高校生になってからは10分、大学生のときは30分、実業団に入ってからは1時間を目標に、ほかの選手より長く練習していました。

 小出義雄監督(享年80)のもとで練習していた頃は、朝1000回、昼1000回の腹筋をやっていました。大変だと思うかもしれませんが、毎朝、顔を洗ったり、歯を磨いたりすることと同じです。習慣になればできる。そんなに大変なことではないんです。それに、100mを3本など、1回の行動だけを見れば、すごく小さなことかもしれませんが、それを毎日やり続けていたから、まったく違う景色に辿り着けたと思います。

 オリンピックのような舞台では、周りの選手がみんな、すごく強く見えます。みんな世界一を狙って、この場所に立っているわけですから。でも、私がスタートラインに立ったとき、不安な気持ちを打ち消せたのは、それまでの努力でした。

「この中で私ほど腹筋をしてきた人はいない!」。そう思ったら、緊張で足がすくむこともありませんでした。

 運がよければ世界一になれると、私は思ってはいません。腹筋でもなんでも、何かしらの努力を世界一やってきた人がその栄光をつかめるのかなと思います。不安になって気持ちがぐらつきそうになったときに“これだけは負けない”と思えることがあると、ぶれずに頑張れますよ。

【プロフィール】
高橋尚子(たかはし・なおこ)/1972年5月6日生まれ、岐阜県出身。中学1年生で本格的に陸上競技を始め、県立岐阜商業、大阪学院大学を経て、実業団・リクルート入り。1998年に名古屋国際女子マラソンで初優勝して以来、マラソン6連勝を果たす。2000年、シドニー五輪では陸上競技としては64年ぶり、日本女子初の金メダルを獲得し、同年、国民栄誉賞を受賞。2001年、ベルリンマラソンでは2時間19分46秒の世界記録(当時)を樹立。2008年10月に現役引退後はスポーツキャスター、マラソン解説者などで活躍している。

写真/共同通信社

※女性セブン2020年10月22日号

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