国際情報

欧州のコロナ第2波襲来「目先の利益」優先する心理も影響

夜間外出禁止令が発効される前日、食事を楽しむ人々で混雑したパリの飲食店(写真/時事通信社)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、再び新型コロナウイルス感染拡大の第2波に直面しているヨーロッパについて。

 * * *
 コロナの第2波に見舞われているヨーロッパの各国で、再び厳しい行動制限が始まっている。多くの国で新規感染者数の最多記録を更新し、10月16日にはヨーロッパ全体で1日あたりの新規感染者数は約15万人を越えた。第1波の時は多くても4万人程度だったというから、加速度的に感染が拡大していることになる。

 最近は報じられなくなったが、日本国内の新規感染者数は10月21日に新たに620人が確認され、累計で9万4750人に達した。他国と比較してPCR検査数が少ないということもあるが、桁が違うのは間違いない。フランスやイギリスの累計感染者数は間もなく100万人に達する勢いだというから、日本とは比べものにならない感染状況なのだろう。

 4月をピークとした感染の拡大も、夏に向け徐々に収束傾向にあったヨーロッパ各国。厳しいロックダウンを解除し、多くの店が営業を再開し、バカンスシーズンを迎えた。人が集まり移動しはじめたことで、「もう大丈夫だろう」と人々の危機感が薄れ、再び感染が拡大してしまった。その理由の一端にあるのは「現在志向バイアス」だ。

 現在志向バイアスとは、将来の利益より目先の利益を優先させてしまうこと。未来より現在の利益に重み付けをする傾向のことをいう。例としてよく用いられるのがダイエットや不倫。つい目先の甘い誘惑や喜びを優先させてしまうというのも、このバイアスによるものだと言われる。

 1日あたりの新規感染者数が3万人を超えるフランスでは、マクロン大統領が10月14日、夜間外出禁止令を発令。17日の21時から発効された。発効直前のパリ市内の様子がニュース番組で放送されていたが、店の前のテーブルには何組もの客が密になり、食事やおしゃべりを楽しんでいた。明日からまた当分の間外食が出来ず、友達と会うことも難しくなる。それならギリギリまで楽しみたいという思いも理解できる。現在志向バイアスが働いているのだろう。

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