スペインでも19日、複数の自治州でレストランやバーの営業が停止され、24時間営業の店舗では時短営業が要請された。公共交通機関はもとより、公共の場で対人との距離を確保できない場合、屋内外を問わずマスク着用が義務化されているが、州によって罰則規定はバラバラだ。そのせいか、ある大学構内での学生たちの様子を報じた映像では、かなりの学生がマスクを着用していない。挨拶はキスとハグという文化があり、顔全体や口元を中心に相手の表情を読み取る傾向があるため、表情が分かりにくく蒸れて煩わしいマスクは敬遠されがちになる。ここでも現在志向バイアスが関係している。
第2波の影響が深刻なイギリスのリバプールでは、パブやバーが営業停止になっていたが、ジョンソン大統領は当面の間感染の拡大が止まらないとして、地元市長たちの反対を押し切り、マンチェスターの都市圏で営業停止や行動規制を強化すると発表した。
ヨーロッパ各国では公共交通機関や公共の場でマスクの着用を義務化、違反者には罰金が科せられる所もあるが、煩わしさから疎んじられる傾向も強い。アメリカのトランプ大統領のように、自らマスクをしないことが力強さの象徴のように思わせている国もあり、人々の現在志向バイアスを後押ししてしまっている格好だ。
東京でも一時期、小池百合子都知事が「夜の街関連」への外出を控えるよう声高に叫んでいたが、この時新宿の感染者が増加していたのも、この現在志向バイアスが関係していたのだろう。だが、ヨーロッパに比べて危機管理意識が高い日本なら、禁止令が発令された場合、潮がサーッと引くように繁華街から人の姿が消えるのではないだろうか。そうは言っても油断は禁物。夜の街には、かなりの人が戻ってきている。
楽しみや喜び、ストレス解消やリラックスに、足を運びたくなる、集まりたくなるのは誰もが同じだ。煩わしいマスクを外したい気持ちも分かる。コロナとの闘いは、自らの現在志向バイアスとの闘いでもあるだろう。