2000年、東京・新宿の京王百貨店前の歩道でも地上にいた男性会社員が巻き添えになり重傷を負った(時事通信フォト)
風間さん、愚痴というより後半の「迷惑かけないで欲しい」を言いたかったのだろう。あの13年前、2007年の事件で飛び降りた女性は統合失調症で入院歴があり、その日は通院日だった。
「だって池袋駅前ですよ、下に大勢の人がいるのはわかってるはずです。山でも崖でもいいはずなのに」
山でも崖でも死んでは駄目だ。ちょっと暴走気味の風間さんだが気持ちはわかる。巻き添えになった被害者はもちろん、それを目撃してしまった多くの人たちも被害者、現場となってしまった施設も被害者だ。
「落ちた時の音がね、忘れられなくなります。あの音だけは覚えてますね。今回も目撃者は音のこと言ってましたね。独特なんです」
聞いたことのない私には想像つかないが、トラウマは耳に宿る。野生の本能の残滓か。心的外傷後ストレス障害に苦しむ兵士も耳に残る戦場の噪音、それと似た音が聞こえてくるたびフラッシュバックに苛まれるという。
「さっき迷惑かけるなって言ったけど大阪のやつもそうです。梅田駅なんて池袋駅と同じで凄い人でしょう。屋上から飛び降りてぶつかったらどうなるか、わかんないんですかね」
巻き添えにあった人、目撃してしまった人
実は飛び降りによる巻き添え事件は今回の梅田、そして本稿の池袋だけではない。それ以前の2006年には東京調布の電気通信大学で55歳の女性が飛び降りて20歳の女子学生が巻き込まれた。飛び降りた55歳の女性もまた、うつ病の治療中で無関係の大学に侵入、文化祭の準備のために登校していた女子学生に直撃して死亡した。女子学生は頭蓋骨骨折の重症ながら命はとりとめたが、彼女の痛み、恐怖、その後の苦しみを思うと筆舌に尽くし難い。記憶に新しいところでは2年前の2018年、新宿歌舞伎町の雑居ビルから20代の女性が飛び降りて死亡、直撃した通行人の男性が重症を負った。ホストクラブの追い込みに悩んでの自殺とされている。他にも都市部における飛び降りによる巻き添え例はある。