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2020.10.31 16:00  NEWSポストセブン

『鬼滅の刃』、傷ついても立ち上がる主人公は稀勢の里のよう

 日本人に馴染み深い時代劇の要素も多い。仇討ちは時代劇の中でも日本人が大好きなテーマの1つだし、鬼殺隊は剣士の道場のようで、柱は武道の世界で例えれば師範のような存在だ。水、雷、炎など闘いには「型」があり、バリエーションが豊富なため飽きることがない。子供たちがお気に入りのキャラクターの型を真似てみたくなる仕掛けが満載だ。

 登場人物もそれぞれキャラが濃く魅力的。アイドルグループではないが、好きなキャラクターを選べる“推し”的な楽しみもあるから、それだけファンの幅も広がる。主人公の“王道”キャラも広く受け入れられる一つの要素だ。炭治郎は、強さと弱さを併せ持ち、心優しい真っ直ぐな少年だが、どこか抜けていて不器用なところがある。ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の主人公・七瀬のように、ここ数年話題になったドラマの主人公たちは、みな同じようなキャラをしている。

 倒されていく鬼たちの「悲しい生き物」となった過去もそれぞれ描かれており、そんな鬼に寄り添い憐れむ炭治郎の気持ちにも感情移入しやすい。多くの勧善懲悪ドラマでは、善や勝者はしっかりと描かれるが、悪や敗者にはスポットが当てられない傾向がある。こうした現象を「生存者バイアス」というが、『鬼滅の刃』はこのバイアスを覆すことで、闘いのむごさや鬼になった人間の悲しさ、哀れみを表現し、作品に深みを与えている。鬼になっても人間を守る禰豆子の存在も、生存者バイアスとの対比を鮮明にしており、兄弟や家族の愛や絆をより強く感じさせているのだ。

 こうしたさまざまな仕掛けや設定により、登場人物たちの喜怒哀楽がストレートに伝わってきて、見る人の感情が揺さぶられ、心に響くのではないだろうか。『鬼滅の刃』は、日本人が好むもの、好んできたものが散りばめられ、それぞれが絶妙にまとまっているアニメと言える。

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