芸能

『鬼滅の刃』、傷ついても立ち上がる主人公は稀勢の里のよう

異例の大ヒットで平日でもほぼ満席状態

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、記録的大ヒットとなっているアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』について。

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 今や“日本経済の柱”とまで言われている『鬼滅の刃』。マンガやアニメを見たことがない人でも、タイトルぐらいは知っているだろう。

 10月16日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、公開から10日間で興行収入100億円を突破。早速、映画館に足を運んでみたが、史上最速で記録を更新したというだけに、平日でもほぼ満席、観客の年齢層も幅広かった。

 コラボ商品も続々登場している。飲料大手のダイドードリンコは、『鬼滅の刃』とコラボした28種類の缶コーヒーを期間限定で発売、わずか3週間で累計販売本数が5000万本を突破した。回転寿司チェーンのくら寿司も、店頭で『鬼滅の刃』オリジナル下敷きの販売を開始すると、コロナ禍で落ち込んでいた売上がわずか1か月で回復。クリスマスケーキでコラボしたローソンも、既に予約販売数量に達し売り切れ続出というから、人気の凄さが分かる。

 なぜこれほど人々を惹きつけるのか。鬼滅ファンの一人としては、劇中で日本人好みの要素がふんだんに盛り込まれていること、喜怒哀楽が分かりやすく感情移入しやすいことなどが関係しているのではと思うのだ。

『鬼滅の刃』は、人食い鬼に家族を殺された主人公・竈門炭治郎が、命は取り留めたものの鬼にされてしまった妹・禰豆子を人間に戻し、鬼を退治するため、禰豆子とともに旅に出る話だ。鬼を退治する組織「鬼殺隊」の一員となり、仲間と修行を重ねて成長し、「柱」と呼ばれる隊の上層部の人々とともに強い鬼を倒していく。

 時代設定は大正のため、無理なく作品の世界観に入り込みやすい。大正には、明治や昭和と違って文明開化や戦争といった強いイメージがなく、西洋文化が入り混じった「大正ロマン」によって「鬼がいても不思議はない」と思わせる雰囲気がある。和と洋が入り混じったノスタルジックな時代背景のため、登場人物たちの外見にも違和感がない。

 ストーリーはスピーディーで分かりやすく、視聴率の記録を更新したドラマ『半沢直樹』(TBS系)と似た要素を持つ勧善懲悪もの。半沢直樹と違うのは、これが仕事ではなく主人公の宿命であり、家族愛や兄妹愛が主人公の原動力となっていることだ。仇討ちに燃え、逃れられない運命に立ち向かう主人公が修行し成長していく過程には、仲間との友情や絆、師弟愛が盛り込まれており、傷ついても尚立ち上がり闘う主人公の姿は、2017年に19年ぶりに日本出身横綱となった稀勢の里(現・荒磯親方)のようで、あの時の世間の熱狂が思い出される。

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