芸能

『鬼滅の刃』、傷ついても立ち上がる主人公は稀勢の里のよう

異例の大ヒットで平日でもほぼ満席状態

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、記録的大ヒットとなっているアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』について。

 * * *
 今や“日本経済の柱”とまで言われている『鬼滅の刃』。マンガやアニメを見たことがない人でも、タイトルぐらいは知っているだろう。

 10月16日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、公開から10日間で興行収入100億円を突破。早速、映画館に足を運んでみたが、史上最速で記録を更新したというだけに、平日でもほぼ満席、観客の年齢層も幅広かった。

 コラボ商品も続々登場している。飲料大手のダイドードリンコは、『鬼滅の刃』とコラボした28種類の缶コーヒーを期間限定で発売、わずか3週間で累計販売本数が5000万本を突破した。回転寿司チェーンのくら寿司も、店頭で『鬼滅の刃』オリジナル下敷きの販売を開始すると、コロナ禍で落ち込んでいた売上がわずか1か月で回復。クリスマスケーキでコラボしたローソンも、既に予約販売数量に達し売り切れ続出というから、人気の凄さが分かる。

 なぜこれほど人々を惹きつけるのか。鬼滅ファンの一人としては、劇中で日本人好みの要素がふんだんに盛り込まれていること、喜怒哀楽が分かりやすく感情移入しやすいことなどが関係しているのではと思うのだ。

『鬼滅の刃』は、人食い鬼に家族を殺された主人公・竈門炭治郎が、命は取り留めたものの鬼にされてしまった妹・禰豆子を人間に戻し、鬼を退治するため、禰豆子とともに旅に出る話だ。鬼を退治する組織「鬼殺隊」の一員となり、仲間と修行を重ねて成長し、「柱」と呼ばれる隊の上層部の人々とともに強い鬼を倒していく。

 時代設定は大正のため、無理なく作品の世界観に入り込みやすい。大正には、明治や昭和と違って文明開化や戦争といった強いイメージがなく、西洋文化が入り混じった「大正ロマン」によって「鬼がいても不思議はない」と思わせる雰囲気がある。和と洋が入り混じったノスタルジックな時代背景のため、登場人物たちの外見にも違和感がない。

 ストーリーはスピーディーで分かりやすく、視聴率の記録を更新したドラマ『半沢直樹』(TBS系)と似た要素を持つ勧善懲悪もの。半沢直樹と違うのは、これが仕事ではなく主人公の宿命であり、家族愛や兄妹愛が主人公の原動力となっていることだ。仇討ちに燃え、逃れられない運命に立ち向かう主人公が修行し成長していく過程には、仲間との友情や絆、師弟愛が盛り込まれており、傷ついても尚立ち上がり闘う主人公の姿は、2017年に19年ぶりに日本出身横綱となった稀勢の里(現・荒磯親方)のようで、あの時の世間の熱狂が思い出される。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン