東京競馬場のパドック
軸は昨年の凱旋門賞で日本馬として最先着したキセキ。
一昨年のJCではハイペースで逃げてアーモンドアイの世界レコードをアシストし、今年の天皇賞(春)では、2周目のスタンド前で大きく外に膨らみながら先頭に躍り出てしまうちぐはぐなレースでフィエールマンに連覇を許し、宝塚記念ではクロノジェネシスに6馬身ちぎられた。前走の京都大賞典でも、アーモンドアイと同じ勝負服を捕まえきれず、3年前の菊花賞以来、勝ち星から遠ざかっている。
しかし天皇賞(春)で、キセキの掛かり癖に手を焼いた鞍上は、宝塚記念で「タメればキレる」ことを確信。その意を受けた代打騎乗の浜中騎手は前走で最後方に控えてタメをつくった。今回は再びパリから戻った武豊騎手が手綱を取る。2400mを2分20秒9という時計で2着に逃げ粘った馬が、今回は満を持して直線勝負に賭ける。
「じっくりタメをつくる」といえば角居厩舎のポリシーともいえる調教方針。来年2月で勇退するG1 26勝の名伯楽が、ホースマン人生の集大成ともいえる仕上げをしてくるはずだ。
相手筆頭はもちろんアーモンドアイだが、2019年にこのレースではなくパリに行くことを選んだ菊花賞馬フィエールマン、3歳で有馬記念を制したブラストワンピースにも敬意を表したい。そしてもう1頭、凱旋門賞馬の産駒クロノジェネシス・・・・来年の秋こそは、自由な選択ができるようになってほしいものだ。
●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。