ライフ

江原啓之×鈴木秀子「死にたい」を「生きたい」に変えるには

江原啓之

スピリチュアリストの江原啓之さんが聖心会シスターの鈴木秀子さんと対談

 スピリチュアリストの江原啓之さんと聖心会シスターの鈴木秀子さんの対談で構成される『日本人の希望』(講談社)。日本人に対する“幸せの処方箋”を提示する一冊として話題になっている。

 そして、新型コロナウイルスによる大きな不安のなか、有名人の自殺が相次ぎ、生きづらさを感じる人も多いはず。これ以上自殺を増やさないためにはいま、何をしたらいいのか、どう考えればいいのか──。改めて江原さんと鈴木さんに対談をしてもらった。

鈴木:江原さんとの対談本『日本人の希望』の中でも詳しく触れていますが、私はアメリカで自殺志願者を支援するためのカウンセリング方法を習得してきました。

江原:傾聴に徹するというお話でしたね。

鈴木:ええ。カウンセラーは「自殺なんかしちゃダメ」と引き留めたり、お説教がましいことを伝えても無意味だと認識しておく必要があるのです。「死にたいのです」と言う人に対して、最初に「自殺するかどうかはあなた自身が決めることです」と告げます。ただし自殺を実行に移す前に私に会いに来てくださいと伝えます。すると自殺を考えている人は必ず来ます。

江原:それが意外でした。

鈴木:口では「死にたい」と言いながら、最後の最後までより縋るところを求めているのです。私はまず「約束を守ってくれたのですね。そういう人生の締めくくり方ができるのは素晴らしいですね」と声をかけます。すると自分はそんなに立派な人間ではないと言って、過去を語り始めるのです。

江原:ほぉー。

鈴木:私はそのかたが「自分なんて生きている価値がない」と言えば、「あなたは生きている価値がないと思うのですね」と、オウム返しをするだけ。決して自分の意見を伝えることはないのですが、相手は自分のことを理解してくれたと受け止めるようで、滔々と話し続けるのが常です。

江原:心のデトックスとなり、自殺を思いとどまることにつながるというわけですね。

鈴木:ええ。自分のことを認めてくれる人がいるということが希望となり、生きてみようかという気持ちになる。あるいは誰かに受け入れられるという感覚が、幼い頃に親に褒められた記憶などと結びつき、自分の人生は捨てたものではないと思い直すといったケースもあります。こうしたかたがたを目の当たりにしてきた経験を通して私は、人間の本質的なところには自殺に向かう傾向というのはないものと確信しています。

江原:「死にたい」という叫びは「生きたい」という叫びだということですね。

鈴木:まさに。強い自殺願望を抱いている人であっても、誰かとつながっているという実感を一つひとつ重ねていくことによって、自ずと「死にたい」から「生きたい」へと心のベクトルを転じることができるのではないでしょうか。

問題はいかにして対話の機会を提供するか

江原:人が誰かに心の裡を話す時間は、本来の自分を取り戻すために必要な覚醒の時間だと思うのです。だとすると、やはり厳しいのは覚醒する時間を持たずして死に急いでしまうかたが多いこと。問題は自殺願望を抱く人に、いかにして覚醒の機会を提供するかということになりますね。

鈴木:そうなんですよね。

江原:私は近くの他人に着目すべきだという気がするのです。たとえば日本でも欧米のように精神科医のカウンセリングを受けることが日常的になればいいのになと思います。精神科医が話を聞いてくれれば、相談できる家族や友人がいない人も、内観し、覚醒する時間を持つことができるのではないでしょうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン