口は災いの元、そう感じることが少なくない日々である。大人力について研究するコラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。
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〈こちらのツイートで、「妻」とするところを「嫁」としてしまい、不適切な表現となってしまいました。ご指摘いただきまして誠にありがとうございます。今後気をつけて参ります。1号〉
靴下屋やTabioなどのブランドを運営するTabioのツイッター公式アカウント「Tabio 靴下屋」が、11月4日にこんな謝罪ツイートをしました。これは、その2日前に同じアカウントが以下のツイートをし、たくさんの批判が寄せらことに応えたもの。
〈ところで、明日は休日ですね!皆さんは何します!? 私は、嫁から「とりあえずこれを読め」と佐々木倫子先生の「Heaven?」を全巻渡されたので読みます。(ドラマ版を見ていて、「これ原作見てないわ」と言ったら、速攻でした。)1号〉※いずれのツイートも改行は省略
どうやら「嫁」という表現を使ったことが「ケシカラン!」とされたようです。そういう考え方があるのは承知していますが、わざわざ文句を付けることでしょうか。夫婦仲のよさが伺える、素敵なツイートではありませんか。
面倒臭い批判をかわして逆に好感度を上げようという狙いがあったんだとは思いますけど、Tabio 靴下屋さんが「不適切な表現」と言ってしまったことも残念です。「嫁」と「読め」をかけたつもりが、うまく伝わらなかったことを反省するならともかく。
「嫁」という字は女性を家の従属物として扱っているからよくない──。大学の「女性論」のゼミで先生からそういう話を聞いて、なるほどと思ったのは、かれこれ40年近く前のことです。「家内」は女性は家の中にいるものだという前提の押しつけだし、「主人」は主従関係に基づいているからダメという話もありました。
当時はまだまだ家父長制とか家至上主義みたいなのが残っていて、その価値観に縛られていることを自覚するために、「『嫁』という字は女偏に家であり……」みたいなこじつけの屁理屈にも、ある程度は意味があったかもしれません。しかし、令和になった今、そんな古式ゆかしい言説を振り回するのは、あまりにも的外れです。たまたま聞きかじって、嬉しくて言ってみたいのかもしれませんけど。
「妻」「嫁」「家内」「女房」「ワイフ」「ウチのカカア」などなど、男性が結婚相手のことを指す言葉はさまざま。女性が結婚相手を指す言葉も「夫」「主人」「旦那」「亭主」「ダーリン」「ウチの宿六」など多種多彩。どちらにも使えて「対等っぽさ」を強調している「パートナー」「配偶者」という言葉もあります。
「漢字の意味として」と言い出したら、じつはキリがありません。「嫁」のつくりの部分の「家」は、屋根の下に家畜がいることを示しているという説もあります。家畜を守る存在が「嫁」となると、家畜がいない家庭では使うことがはばかられます。「男」という字にしたって、田んぼを耕してこそ男だと言われたら、田んぼ農家以外の男たちはどんな顔して生きていけばいいのでしょう。